第550夜:護のこけし(戦前2)
写真(2)の左と中央が先日のヤフオクで入手した護こけしで胴底の署名から38歳と分かる。またラベルには「十六.十一.二九」と記載されている。右は第29夜で紹介した戦前(昭和16年頃)の護こけし。その中の記載で『・・・、やがて16年になると頭は卵形に丸くなり、眉目も湾曲が出てきてユーモラスでややグロテスク気味なこけしへと変貌していく。』とあるが、まさにその時期のこけしである。そして、左の2本を比べても表情には違いが見られる。
写真(3)に胴底の署名を示す。右2本は草書体の署名であるが、左は楷書体であり、左の2本を比べても同じ38歳であるが製作時期は異なると推測される。また、ラベルの日付が同じことから、前所有者はこの2本を同時に入手したと思われる。縦長の楕円形で眉と目の間隔が大きく開きユーモラスな表情はこの時期の護こけしの大きな特徴であり、中央のこけしは正にそれを具現している。何とも異様な表情であるが、じっと見つめられると目が離せなくなる。アニメの「ちびまるこちゃん」のおじいさんの顔を思い出してしまう。保存完璧の胴のロクロ模様は、赤、緑、紫の3色を使い、それぞれの太さを変えることで単調な模様に陥るのを防ぎ、さらに胸元には赤の波線を入れてアクセントにしている。実に憎い心遣いである。左のこけしでは、目が更に下がるとともに湾曲も大きくなって可愛らしさは増すが、護独特の表情は薄れてしまう。護こけしは不思議な魅力を秘めたこけしなのである。
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コメント
「天理参考館」には、中央のタイプの護こけしが数本ありますね。所蔵こけしの殆どは展示に出ていませんが、大分前、見たい系統を「事前予約」して、別室で学芸員さん立会いの下拝見しました。図録に載っていない護こけしの他、巳之吉、円吉、庄七のねまりこ等沢山見られて楽しかったです。
投稿: こけりん | 2011年5月11日 (水) 22時55分
天理参考館のこけしは東京での展示会以外では、薄い図録でしか見たことはなかったので、遠刈田系のこけしは殆ど知りませんでした。そうですか。護のこけしもあったんですか。コレクションの全貌が分かる本格的な図録が欲しいですね。
投稿: 国恵志堂 | 2011年5月14日 (土) 09時07分