第564夜:佐藤吉雄のこけし
遠刈田系の佐藤吉雄は明治41年、栗原郡矢崎村の生まれ。菅原庄七は長兄にあたる。昭和7年、佐藤三蔵の養子となった。従って三蔵長男の武雄は義弟にあたる。昭和5年頃より三蔵から木地挽きを、こけしは庄七から学んだ。本格的にこけしを作ったのは昭和14、5年からで、戦後も30年代初めまで作っている。
写真(2)中央が本稿のこけし。大きさは8寸。昭和14年頃の作であろうか。胴底に青字で「吉」と書かれている。吉雄は庄七のこけしを手本にしているので、庄七型のこけしと言うことが出来よう。庄七譲りの大きな前髪と横鬢が強烈な印象を与える。眉は太く、黒目がちな瞳は庄七よりも滋味がある。写真左は武雄のこけし、「仙台こけしや 31.10.19」1の書き込みがある。写真右は吉雄の戦後のこけし。胴の中央がくびれて、そこに梅模様を描いている。この様式は戦前も作っている。
写真(3)に頭頂部を示す。中央の吉雄は前髪の後に青点、少し離れて赤の太い横線を引いている。秋保こけしの特徴である「乙」の字にはなっていないのである。左右の2本は「乙」の字が書かれているが、武雄は更に前髪の後に赤点が書かれている。元々は中央の吉雄のような模様が描かれており、それが「乙」の字に変化したのであろうか。文献等では普通、頭頂部の写真は載っていないので、はっきり分からない。
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コメント
吉雄は、結構濃厚な味わいですね。
私もその魅力を感じているので、
よくわかります。
毎回勉強になります。
投稿: A | 2011年6月19日 (日) 21時07分
そうなんですよね。
今回、改めてじっくり見てみて、私もそう思いました。
秋保というと、三蔵、庄七、武治が浮かびますが、この濃厚さは吉雄が一番かも知れません。
投稿: 国恵志堂 | 2011年6月20日 (月) 20時57分