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第566夜:念願の忠こけし

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前々から気になっており、何とか1本は欲しいと思っていても、なかなか気に入った作品に出会わさないこけしがある。今夜紹介する秋山忠のこけしもその1本であった。忠こけしが稀品・珍品だった訳ではない。むしろ戦前の第一次こけしブームの頃には、大沼竹雄や松田初見らとともに鳴子のどこの店にもたくさんあったと「美と系譜」にも記載されている。あまりにありふれていたために大事にされなかったのであろうか。同様に大沼竹雄のこけしもあまり出てこない。このこけし、常連のZ氏、A氏との争いを勝ち抜いてようやく入手。とは言え、実物を見るまでは不安もあった。口絵写真は、その顔の下からのアップ。

鳴子系の秋山忠は明治21年、宮城県遠田郡涌谷の生まれ。明治31年、忠12歳の時に鳴子へ移転。明治34年、高等小学校卒業後に椀木地師佐藤徳三郎の弟子となり、徳三郎死後、明治38年より大沼岩蔵の弟子となった。明治43年、23歳で独立して開業。その後、一時期他所で働いたが、昭和10年に鳴子に戻り木地業を再開した。こけしは昭和初期のものから知られており、昭和18年ころまで製作した。昭和22年、62歳で没。

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「こけし辞典」では、『昭和10年頃の初期の作品は、鋭角的な筆使いで、表情のきついものが多い。』とある。本稿のこけしは大きさ尺であるが持ってみると相当軽い。頭は朴の木であるようだ。このこけしで一番挽かれたのは、やはり表情、特に目の描彩である。角にアクセントの付いた鋭角的な眉、それに呼応するかのように描かれた瞳。頭は縦長で、顔の真ん中辺りまで大きな前髪が被さり、前髪から頭頂部全体を被うように大きな水引がまっ赤に描かれている。決してバランスの良い描彩ではないが、何とも大胆な筆遣いであり、目に焼き付いて離れない。目は下目で視線も下を向いた控えめな表情であるが、鋭角的な筆致から芯の強さが感じられる。胴下部のカンナ溝もかなり上にあり、これも胴模様にインパクトを与えている。出品写真で心配していた緑の退色も、茎葉の形が分かるくらいには残っており、胸を撫で下ろした。昭和13年頃の作であろうか。忠の佳品と言ってよいだろう。

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コメント

負けた・・・・。
ようやく終わりかけて、これなら大丈夫と思った時に、
突然の参戦。
一度始まるや否や、猛攻撃。
ひとたまりもないです(笑)。
今泉源治もいいですね。
あれなど誰も目をとめないと思っていたのに、
さすがです。
近い内の登場を楽しみにしています。

投稿: A | 2011年6月23日 (木) 06時43分

ご勘弁下さい。見ている内にどんどん欲しさが募ってしまって(苦笑)。こけしコレクターの業でしょうか。届いたこけしは十分満足のできるもの。頑張った甲斐がありました。
源治2本、今日届きました。明日にでも掲載します。乞うご期待!

投稿: 国恵志堂 | 2011年6月23日 (木) 23時26分

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