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第559夜:「市井にひそむ逸品」(小椋久太郎)

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今夜は「市井にひそむ逸品」の最終回である。その後、出品者からは同種のこけしの出品は見られないことから、「こけし手帖」に記載されていた他の古品こけしは別に流れてしまったものと思われる。今夜取り上げるのは久太郎のこけし。久太郎のこけしについては、特に、久四郎とは一線を画した久太郎独自の特徴が色濃く出ている時期のものを中心に、本ブログでも何回か紹介している。いわゆる「団子梅」の時代である。口絵写真は昭和13年頃の久太郎こけしの顔である。

久太郎の「団子梅」の時代は、「こけし辞典」によれば昭和12年から19年頃までで、『前掛の梅鉢は極端に丸く団子のように描き、頭も短く丸かった』とある。とは言え、この間でも木地形態や描彩には変化があり、極端に胴が長く頭が小さいものもあった。

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写真(2)は、右端が本稿のこけしで、中央は昭和16年頃、左端は戦後直ぐ(20年代)の作である。こうして並べて見ると、本稿のこけしが如何に頭が小さく胴長であることが一目瞭然である。最初の入手者の蒐集時期から考えて、昭和13年から14年頃の作ではないだろうか。それにしても、この時期、久太郎はどうしてこのような形態のこけしを作ったのであろうか。久太郎が引き継いだ久四郎のこけしは、楕円形の頭にどっしりとした太い胴をつけたものである。その久四郎から敢えて離れて自分のこけしを目指したのであろうか。久四郎の弟石蔵のこけしには異常に胴の長いこけしが目に付く。あるいは、そんな影響もあったのであろうか。久太郎のこけしを見ながら、そんな想いに耽るのも楽しいものである。

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