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第557夜:「市井にひそむ逸品」(鈴木幸太郎)

Kotaro_mutuin_kao

今夜紹介するのは鈴木幸太郎のこけし。昨夜の一次と一緒に入手した。以前、ヤフオクに保存状態の良い国蔵のこけしが出品され、その時は入手し損なったが、以来、この型のこけしにも興味を持つようになった。鈴木国蔵のこけしは純粋な木地山系ではないが、戦前から作られており、今では木地山系に分類されている。口絵写真は、幸太郎こけしの顔アップ。

木地山系の鈴木幸太郎は大正11年、湯沢町の生まれ。鈴木国蔵の長男である。昭和13年、高等小学校卒業後、父国蔵について木地を習った。こけしは昭和14年頃から作っており、頬紅を付けた7寸ほどのこけし(初作で30本程作ったとのこと)が有名である。幸太郎は、国蔵のこけしを継いでいるが、国蔵のこけしも文献等での紹介は少ない。「愛玩鼓楽」によれば、胴は作り付けで直胴のものと胴がくびれて下部が広がったものの2種類が掲載されている。

Kotaro_mutuin_hikaku

写真(2)右が本稿のこけし(6寸7分)で、左は「愛玩鼓楽」掲載の国蔵こけし(9寸3分)の写真コピー。本稿のこけしには胴底に「陸奥売店」の押印があり、「愛玩鼓楽」は昭和14年とあるので、ほぼ同時期の作品と思われる。2本を比べて見ると、木地形態、描彩ともに異なる点があることから、同一人の作とは考えられない。即ち、右:幸太郎が左:国蔵を見習って作ったこけしと言うことになる。木地形態の違いはそれほど大きくはないが、描彩はかなり異なる。特に胴中央部の緑と赤の太いロクロ線が、幸太郎と国蔵とで上下が逆になっているのが面白い。また、前髪下の半円形の飾りが、国蔵は赤1つだけだが、幸太郎は弥治郎系のように中央の赤の両脇に緑が2つずつ付いている。胸部に描かれた花模様は幸太郎は5弁であるが国蔵は花弁数がもっと多く違いが分かる。

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