« 第562夜:今泉源治の浅之助型 | トップページ | 第564夜:佐藤吉雄のこけし »

第563夜:落ち穂拾い(我妻信雄のえじこ)

Nobuo_ejiko_s41_kao

暫く前のヤフオクに我妻信雄さんのえじこが出ていた。信雄さんは私が好きな工人のひとり。残年ながら病に倒れてこけしは作れなくなってしまった。その後の消息は分からないが、存命なら80歳くらいになるのであろうか。このえじこも他に入札者が無く、出品値の800円で落札できてしまった。このえじこに特に興味を持ったのは、胴に描かれた大振りの花模様である。同じ模様のこけしを既に持っており、これとペアで並べてみたいと思ったからである。口絵写真は、その顔のアップ。

Nobuo_ejiko_s41_hikaku

写真(2)にこけしとのペア写真を示す。こうして並べて見ると、このこけしとえじこが同時期に作られたものであることが分かる。こけしの製作年代は分からないが、えじこは胴底に「41.6.12」のゴム印が押されている。最初の購入者が押したものであろうか。従って、昭和40年代初めのものと思われる。信雄さんが直治型に挑戦して華麗なこけしを作り出すのは40年代の後半から。本稿のこけしとえじこの頃には、未だ後年の鋭さは見られない。何とも、のどかな表情のこけしとえじこである。その胴に、ぼってりと大きく描かれたまっ赤な花模様(梅であろうか)が印象的である。第14夜に、昭和53年の直治型のこけしとえじこを紹介してあるが、これと比べて頂きたい。第14夜の2本には研ぎ澄まされたような鋭さが感じられるが、本稿の2本からは穏やかな日溜まりのような暖かさを感じる。その時々に作られたこけしが持っている味わいを楽しみたいものである。

|

« 第562夜:今泉源治の浅之助型 | トップページ | 第564夜:佐藤吉雄のこけし »

遠刈田系」カテゴリの記事

えじこ・ねまりこ」カテゴリの記事

コメント

いつも楽しく拝見しております。申し遅れましたが会員番号2765です。
質問がございます。
1.最近こけしの値段が高いようなんですが、何か理由があるんでしょう か。
2.会の報告を読まさせていただいておりますが、こけし人口が増えて、 バブル期にでも入ったのでしょうか
3.けっこう昔のこけしが出てきているようですが、交代期なのでしょう か
失礼な話、本文と関係ないことで申し訳ありません。ぜひ貴方様のお考えをお聞かせ願います。

投稿: | 2011年6月15日 (水) 16時58分

お問い合わせの件、あくまで私の個人的な見解ですが。
(1)高くはなっていないと思いますが。こけしブームの昭和50年代に比べて新品こけしでも半額程度になっています。中古のこけしだとネットオークションだと一部の人気工人を除けば格段に安いです。戦前の古品でも、これも一部を除けば我々普通のサラリーマンでも手の届く範囲になっています。
(2)ここ1、2年で、特に若い女性を中心にこけしに興味を持つ人は増えています。ただ、バブルというような状態ではないと思います。若い方々は、こけしそのものよりも、こけし関連グッズも含めた幅広い楽しみ方をしているようです。
(3)交代期なんでしょうね。こけしブーム期に集めていた方々が高齢になって、こけしの整理をしています。これとネットオークションなどが格好の手段となって、古物商なども古品を出しているので、今まで知られていなかった新しい発見もあるようです。

投稿: 国恵志堂 | 2011年6月16日 (木) 23時13分

ご意見ありがとうございます。こけしはもう昔のものかと思っておりましたが、まだまだ捨てたものではないんですね。
話は変わりますが、これまで500生夜分まとめて本にしてください。
私は途中からでしか読まさせていませんですので。

投稿: | 2011年6月17日 (金) 19時03分

今の若い方々は、こけしに新しい魅力を感じているのかも知れません。伝統こけしは不滅です(笑)。
この千夜一夜物語が本に出来れば嬉しいですが、まだまだ先の話です。当分はブログで勘弁して下さい。

投稿: 国恵志堂 | 2011年6月20日 (月) 21時04分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 第563夜:落ち穂拾い(我妻信雄のえじこ):

« 第562夜:今泉源治の浅之助型 | トップページ | 第564夜:佐藤吉雄のこけし »