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第583夜:伝喜こけしの魅力

Denki_s39_kao

戦前の作を別にすれば、伝喜こけしの優品は昭和33年の復活期のこけしが挙げられる。それについては、第94夜と第369夜で述べた通りである。先日の東京こけし友の会の入札品の中に、6寸の伝喜こけしが出品されていた。なかなかの出来と思い、胴底の署名をみると、昭和39年10月作とある。保存状態も良いので、33年作と比較するために入札すると、同価格が二人おり、ジャンケンの結果、運よく入手することが出来た。今夜は、その伝喜こけしを紹介したい。口絵写真は39年作の顔アップである。

Denki_s39_hikaku

写真(2)右は昭和33年6月作(第369夜参照)で、左が本稿のこけし(昭和39年10月作)である。同型のこけしである。右はロー引きなし、左は二スが塗られたようにピカピカであるため、右はさらっとした感じで、左はねっとりした印象を受ける。戦後の伝喜こけしの経年変化については「木の花(第弐拾五号)」の『戦後の伝喜こけし』に詳しく記載されている。その中の④に39年10月作(7寸)が載っており、本稿のこけしと同様のものである。写真(2)のこけしは右6寸で、左は5寸8分。木地形態では、右に比べて頭が丸くなり、肩の張りがややなだらかになった程度の変化で、大きな違いは見られない。一方、描彩面ではかなりの変化が見られる。先ずは、頭頂部のロクロ模様である。一番外側の太いロクロ帯の色が紫から黒に変わっている。それに合わせるかのように、3つの半円形の前髪飾りの真ん中が赤から黒に変わり、胴中央部の細いロクロ線も黒になっている。即ち、左のこけしでは紫は使われていないのである。また、横鬢も平筆で描いたものが2筆の細筆描きとなった。胴模様では、中央部の上下を飾る赤いロクロ帯が右では上下に3本ずつあるのが、左では上が2本、下が3本となり、以後は全てこの様式で変わらない。更に、胴上下に描かれた旭菊も右では花弁が1本ずつ離れているが、左では根元が繋がった形となっている。その菊模様も、右では上下で赤と緑と色の変化を付けているのが、左では花弁は赤、添え葉は緑に統一されている。こうして良く見て見ると、この間の変化はかなり大きく、復活期の趣が一変してしまったことが分かる。「木の花」では『黒頭によってそこはかとない古風さは失われたが、こけし自体はそれ程悪くない。紋様化の描彩的な悪条件にもかかわらず形を良くしめていて、表情も強くこれはこれでそれまでとは違った伝喜の出発点となっている。』と評されている。

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