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第577夜:高橋盛(戦前ピーク期)

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入札金額の設定は難しいものである。対象となるこけしの製作時期、出来栄え、保存状態などを勘案して想定することになるのであるが、結局は欲望の強さにかかってしまうのである。もちろん、懐具合も重大な問題であるが、これは後で何とかなるだろうと自身を納得させてしまう。その場合に強力なライバルが出現すると、価格はみるみる内に高騰してしまう。今回の盛も一応想定した価格はあったが、最後の1対1のバトルで落札価格はそれをかなり上回ってしまった。後から冷静になって考えると、この落札価格が相応のものであったかどうか気になるものである。最終評価は実際に落札したこけしを見てみるまで分からない。さて、今回の盛は・・・。口絵写真は、その盛の顔アップ。

ネットオークションでは出品時に提示された数枚の写真により判断して入札する。当然、そのこけしの全てを見ている訳ではなく、また写真という性格上、どこまで実物を忠実に写しているかもわからない。そんな訳で、特に高額の値を付ける場合には相当のリスクを覚悟しなければならない。作12日、帰宅すると宅配便の包みが2個届いていた。1つは昨夜紹介した安太郎のこけしで、もう1つが盛のこけしであろうことは直ぐに分かった。盛の包みを開ける。大きさは尺であるが、想像していたよりも細く感じる。先日入手した秋山忠の尺こけしが太めだったので、そう感じたのかも知れない。先ずは、胴部の包装を解いた。思った以上に綺麗な胴に大きな菊花が2輪堂々と描かれている。色も胴によく馴染んでおり、緑の退色も殆ど無いようだ。頭は更に別の包装紙に包まれていた。この瞬間が一番緊張する。胴に比べて小さめの頭には張りのある顔が描かれていた。素晴らしい表情である。そして身体中が満足感に満たされていった。

盛のこけしは大正時代から戦後の昭和40年代初めまでのものが残っている。それらは、「戦前鳴子時代」、「秋田時代」、「戦後の鳴子時代」の3つに大別され、「戦前鳴子時代」はさらに「大正~昭和初期」、「木形子洞頒布(昭和7年前後)」、「ピーク期(昭和10年前後)」に分けられる。本稿のこけし、ピーク期のものである。

Sakari_s10_hikaku

写真(2)が今回落札したこけし。大きさは尺。正面と斜め上からの写真である。ピーク期というと胴は細身で反りのあるものが多いが、この時期の盛こけしはそれとは逆でやや膨れ気味なのが大きな特徴である。他の時期は胴中が凹む反りがついているので、この膨らみは却って新鮮であり、戦前作の暖かみを感じさせる。肩は高く、首下と肩に赤いロクロ線を配し、その間に緑のロクロ線を間を空けて引いている。ロクロ線を均等に引かず地の部分を大きく残しているところが心憎い。本稿のこけしでは、その地の部分が黒ずんでしまっているのが惜しい。胴に比べて頭は小さめな蕪形である。小さめな前髪と頭頂部の赤い5筆の水引、4筆の横鬢と3筆の鬢飾りとも申し分ない。そして面描は、眉を大きく鬢寄りに描き、一側目は反対に中央寄りに描いている。左の瞳にはピーク期らしいアクセントも見られ、気品と緊張感を持った素晴らしい表情となっている。ピーク期の盛こけしの中でも第1級の作と言って良いだろう。一般的には最もこけしらしいのが「鳴子こけし」、この盛こけしは、正に『こけしの中のこけし』と言ったら言い過ぎであろうか・・・。

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コメント

これは素晴らしいこけしですね。
面描味わいあり、フォルムも古風さを残したもので、
実に含蓄があると思います。
私もほしかったですが、あの値段では是非もないことでした。
今度見せてください。

投稿: ぽっぽ堂 | 2011年7月14日 (木) 08時08分

私にも今度是非見せて下さい!

投稿: 玉ちゃん | 2011年7月14日 (木) 18時33分

あと!
安太郎もゼッタイ見せて下さい!!

投稿: 玉ちゃん | 2011年7月14日 (木) 18時44分

本当に良いこけしですが、確かに高くなりましたね。
結局、所有欲に負けた結果です(苦笑)。
7月の友の会例会に持って行きますので、もしお時間があればお越し下さい。

投稿: 国恵志堂 | 2011年7月14日 (木) 22時41分

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