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第576夜:安太郎のこけし

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去る10日締切のヤフオクは大変だった。当日のお目当ては高橋盛であったが、所用で外出していたため帰宅は22時を回っており、締切まであと30分を残すばかりであった。すぐさまヤフオクを覗くと、盛は9万円になっており、相応のメンバが入札に名を連ねていた。早速、入札に参加したが、私にはもう1つ欲しいこけしがあった。鈴木安太郎のこけしである。締切時間が近かったため、盛と安太郎の両方を睨みながらの入札であった。運良く入手出来たその安太郎こけしが早くも届いたので、今夜はそれを紹介したい。なお、盛も届いており、こちらは次回のお楽しみである。口絵写真は安太郎の顔アップ。

山形系の鈴木安太郎は明治28年、寒河江の生まれ。鈴木米太郎の長男である。明治40年頃より父米太郎に就き木地修業。作った木地製品は市の露店で売ったという。本格的にこけしを作ったのは、昭和12年に川口貫一郎氏の勧めによる。戦前は18年頃まで盛んにこけしを作った。戦後は昭和30年にしばたはじめ氏の勧めで復活。

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写真(2)に全体像を示す。大きさは8寸3分。前所有者のメモが胴底に貼り付けられており、それによると昭和13年頃の作と書かれている。角張った頭はやや縦に長く、胴も角張った直胴で裾が窄まっている。肩には段があり、その段も含めて胴の上下には赤と緑の細かいロクロ線が引かれている。頭は回すことが出来る。小さな前髪は頭頂に近く、大きな横鬢は離れて描かれているため、正面から見ると全面顔と言った状態である。眉・目・鼻は直線的で長く、大らかであるが気品に富んだ表情である。胴には大きな5弁の花をぼってりと5輪描き、間に3筆の簡単な葉を配している。向かって左側の胴下部には緑で柵状の模様を描き添えている。古武士を思わせる風貌である。戦後のこけしはちまちまとした描彩になり、別種の味わいとなっている。

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