第585夜:武蔵の亀三郎型
残暑お見舞い申し上げます。8月になってから旅行に出掛けていたこともあり更新が滞っていた。さて、私が以前から欲しい欲しいと思っていたこけしに、高橋武蔵の通称「亀三郎型(明治時代の武蔵古型)」があった。この型については「木の花(第参号)」の『戦後の佳作』に取り上げられている。その記事をみて是非欲しいと思っていたが、1度「ひやね」の即売で見かけたことがあった以外、目にすることがなかった。8/6が締切だった「ひやね」の『こけし往来-第36集-』の紙上即売に、この亀三郎型が掲載されていたので応募したところ、運良く入手することが出来たので、今夜はそのこけしを紹介したい。口絵写真は、その亀三郎型の顔アップ。
「木の花」によれば、この亀三郎型は「昭和38年から40年頃まで、木(みずき)の状態良く肌の白いものが在庫した時のみ、収集家向けに製作販売されたため、数量的には極めて少量であり、武蔵の内では明治の高亀系の古型を知る貴重な資料である」とある。「木の花」には、その昭和38、39、40年作の亀三郎型の写真と特徴が記載されている。
写真(2)の右端が武蔵の亀三郎型(8寸)である。胴底には「38.5.5」の書き込みがあり、昭和38年作と思われる。但し、「木の花」の掲載写真およびその特徴と比べると、菊模様の様式や土の色(38年、40年は赤で、39年は緑)など昭和39年作の方に似ている。但し、菱菊の上の菊花が通常の横菊ではなく立ち菊になっているのが珍しい。この亀三郎型の特徴は、上下に深い鉋溝の入った白胴と一筆目にあると思う。この亀三郎型の原になった明治時代のこけしは大きさが6寸前後だったため、目は一筆目だったのであろう。そんなことから、正吾さんの同型(正吾さんは亀三郎型とは呼んでいない)のこけしを並べて見た。写真(2)の左3本である。左から3本目が昭和55年、2本目が56年、左端は平成13年作である。一筆目はちょっとした筆使いで表情が変わり易く、この3本でもそれが現れている。55年は、正吾さんが武蔵古型を作ることで一時の低迷期から復活した年。この亀三郎型でも、素直な一筆目で爽やかな微笑みを再現している。56年作では、筆使いに多少遊びが出てきて味のある一筆目となっている。平成13年作は、正吾さんに依頼して作って貰ったもの。眩しいほどの白い胴に小振りの一筆目が愛らしい。胴模様は「木の花」掲載の38年作と同じ古式の菱菊を描いている。
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