第587夜:三春さんの石蔵写し
「原」となる石蔵は、古品こけしを一括して入手した中に入っていたもので、昭和14,5年頃のものと思われる(第268夜参照)。復活初期のものと比べると、なで肩で細身であるが、きりりとした表情が魅力的なこけしであった。
写真(2)に今回作って頂いた5本全てを並べて見た。ご覧のとおり素晴らしい出来である。写しを依頼する際、複数本を作って貰うと、手仕事故にどうしても出来不出来が生じるものだが、三春さんには、他に7寸を3本作って貰ったが、いずれも甲乙付けがたい程の出来栄えであった。三春さんは写しを作る際には、出来るだけ「原」に忠実に作ることを心掛けているとのことで、今回の写しでも、あの石蔵のち密な胴模様を一筆の抜けも無く再現してくれている。1,2本ならいざ知らず、これだけの本数を全く同じように作るのは、さぞかし大変だったと思う。さて、「原」の石蔵、胴模様が正面から少しズレており、これは描いた時のちょっとしたブレだと思っていたが、三春さん曰く「この石蔵こけしは少し横を向いているのであり、それは意識的にやったのだと思う」とのこと。これには正直驚いた。石蔵の写しを10種以上も作った三春さんだから言えることだと思う。石蔵には、そういうちゃめっけがあるのではと言う。そう言われて、石蔵こけしの顔を少し横に向けてみた。すると正面から見るのとは違った、何とも妖艶な色気が漂ってくるではないか。復活初期の石蔵は肩が張り、着物の襟も上部できちんと揃えており、清純な乙女の雰囲気であったが、この石蔵では襟も開き気味で胸元の肌も見えている。そして、やや横から、かすかな笑みを浮かべてこちらに視線を送っている。これには参った。写真(2)では「原」とその右側3本を横向きに、左側2本を正面向きに並べてみた。表情の違いが分かって頂けるだろうか。三春さんの写しは、その点まで踏まえて作られている。素晴らしい写しが出来たものと喜んでいる。今回の写しを作って貰ったことで、また新しい発見があった。こうして、こけし熱は益々高まっていくのであろう(苦笑)。
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コメント
全く、三春さんの技量とセンスには感服します。
腕が確かなだけではなく、こけしのニュアンスさえもくみ取ってしまう。写しといえど、すでに三春さんのものになっている気がします。
投稿: kuma | 2011年8月17日 (水) 10時12分
kumaさん、お久しぶりです。
三春さんの真摯なこけしへの取り組みには敬服しています。
そういう気持ちが作るこけしに現れているのでしょうね。
最近はレパートリーも広がってどんなこけしでも上手くこなしますが、やはり石蔵型には力が入るようです。
これからも楽しみです。
投稿: 国恵志堂 | 2011年8月17日 (水) 22時51分