第590夜:源吉のこけし(戦前)
写真(2)に源七のこけし(左)と本稿の源吉のこけし(右)とを示す。尺1寸というサイズに、入札時はちょっと大きいかなと思っていたが、届いたこけしを並べて見ると源七とほぼ同サイズで、並べて見るのにちょうど良い大きさであった。この源吉こけしは出品コメントに昭和16年頃とあり、源七とほぼ同時期。胴底には両者とも青字の印が署名として押されている(写真(3)下参照)。戦前の同時期の親子のこけしを同サイズで見比べることが出来るという幸運を得ることが出来た。442夜で述べたように源七のこけしには爽やかな若々しさを感じるが、源吉のこけしには落ち着いた重厚さを感じる。同じ重ね菊の胴模様であるが、源吉は花弁が9~10枚の緻密な描彩の菊を5段に重ねているが、源七の花弁は6~7枚で大らかな菊の4段重ねであり、父(師匠)のこけしとの違いを見せる。
さて、今回の源吉のこけしを詳しく見て疑問に思う点が2つあった。1つは黒頭頭頂部に中剃りが無いこと。もう1つは、前髪と横鬢の交差部に描かれる赤2線の飾りである。「愛玩鼓楽」には昭和12年と14年の源吉こけしが載っているが、いずれも中剃りがある。また戦後の源吉こけしの黒頭(例えば第405夜)にも中剃りは描かれている。このこけしに中剃りが無いのはたまたまなのであろうか。ちなみに源七のこけしにはある(写真(3)上参照)。次に赤い髪飾りであるが、前述の「愛玩鼓楽」の源吉には描かれていない。戦後の源吉こけしには描かれているので、この鬢飾りはこの頃から描き始めたものなのかも知れない。
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