第596夜:珍品こけし(高橋みね)
昨夜の柴田良二のこけしも珍しいものであったが、今夜紹介する「高橋みね」のこけしは、その最たるものの1つであろう。このこけしがヤフオクに出品された時、どこかで見たような記憶があった。それは「こけし辞典」の記載であった。その内容を読むにつれ、このこけしに対する興味がどんどん大きくなっていった。実際に現物を見て、確認したいことが沢山あったからである。私にとって、古品を買うことは、過去の時代を買うことである。そのこけしが持っている(その時代に作られたという)「時代性」は復元品など他のもので代用することは出来ないからである。時として、その「時代性」は高価なものとなるが、それは仕方のないこと。ただし、今回のこけしは「時代性」よりもその「素性」に興味があったのである。口絵写真は、高橋みねのこけしの顔アップである。
先ず、「こけし辞典」の説明からおさらいしておこう。高橋みねは明治8年の生まれ。鳴子の高橋利四郎の妻となる。利四郎は、高橋直蔵の弟子であり、大正7年没。小物が得意でこけしも作ったと言われているが確認されていない。利四郎の死後、みねが店を経営し、利四郎の弟子の中村雷治にこけしを作らせたというが、これも不明である。さて、岩手県繋温泉で大正末(推定)に「高橋みね」名義で売られたというこけしが残っており、「こけし辞典」にその写真が載っている。今回入手したこけしは、この辞典掲載のこけしと全く同型のものである。描彩の違いから同一品ではないことは分かる。しかも、胴底には「繋こ-売 鳴子 高橋みね」との記載がある。(別途、181225と日付のような鉛筆での書き込みもある)。そう、それは「辞典」での解説の通りなのである。これは、辞典掲載のこけしの胴底にも同様な記載があるからなのではないかと推測している。
写真(2)に、この立ち子の全体像と胴底の記載を示す。では、この立ち子の特徴を整理してみよう。①大きさは4寸。②首が長く、南部系のキナキナのようにくらくらと動く(写真中央)。③表情は大沼竹雄に似ている。④胴模様は縦長の車菊で、これも竹雄に似ている。⑤繋温泉で売られたらしい記載がある。⑤高橋みねとの記載がある。利四郎とその弟子達のこけしについては深澤要氏の「こけし追求」に記載されているくらいで、それ以外については殆ど知られていない。このこけしをもう少し調べてみたいと思う。何か知っている方が居られれば、ぜひ教えて頂きたい。
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