第595夜:柴田良二のこけし
良二に関する文献等での記載は殆ど見当たらない。「こけし辞典」では「柴田鉄蔵」の項に、『なお、養子良二(小椋慶次郎次男、昭和19年1月16日生)が一時こけしを作り、<手帖・71>に紹介されているが、成人後は他の職業に従事している』とある。その「こけし手帖」の記事は、ある収集家が昭和33年の夏に鉄蔵を訪問した時の話で、その中で、当時15歳だった良二の初作を紹介している。そのこけしは戦後の鉄蔵の目の丸いこけしを真似たものであり、初作というだけあって、たどたどしい筆致である。この2つの記事から、柴田良二は昭和33年頃よりこけしを作り始め、それは成人するまでの数年間と想定される。
写真(2)左が6月例会に出たもので、右が本稿(8月例会で入手)したものである。いずれも一筆目の泰一郎型であるが、木地形態は大きく違うことが分かる。それが製作時期の違いによるものなのか、別の型として作り分けていたのかは分からない。しかし、どちらも相当に完成度の高いこけしである。木地挽きも描彩もかなり手慣れており、この手のこけしもかなり作ったはずである。時期も昭和30年代の中頃からの数年であり、もっと沢山出てきて良いと思うのだが・・・。転業後の消息は分からないようだが、存命なら復活してほしい工人である。
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コメント
めでたいお顔のこけし、秋田のこけしはシンプルな一筆目に良いものが多い気がします。今回の鳴子の実演工人に北山賢一さんがいらしていました。小寸でしたが、どうしても欲しいこけしがありました。大きなこけしは、秋田県こけし展で買おうと思いました。鳴子には初めてこけしまつりに来たらしい人も多く見受けられ、北山さんの大きなこけしは、そんな人達に沢山買って欲しいと思いました。
投稿: kuma | 2011年9月 7日 (水) 20時49分
kumaさん、コメントありがとうございます。
一筆目に簡素な菊花模様、泰一郎や米吉に代表されるこれらのこけしはほんわかとした暖かな感じを与えますね。賢一さんは、このような木地山系こけしの伝統を引き継いで、ミニこけしから大寸まで魅力溢れるこけしを作っています。これからも頑張って欲しいものです。
投稿: 国恵志堂 | 2011年9月 8日 (木) 08時19分