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第601夜:珍しい栄治郎型(せつ子)

Setuko_eijiro_kao

蔵王系の代表的なこけしである栄治郎型は、能登屋の工人のみならず、他の蔵王系の工人によっても作られ、更にはその贋作も出回ったことがあった。今回、珍しい工人の栄治郎型を入手したので、紹介したい。こけしの胴底には「せつ子」と署名があり、岡崎昭一の妻女「せつ子」工人のこけしである。ところで、「せつ子」工人については、こけしのガイドブックにも記載がなく、その詳細は良く分からない。名和コレクション「美しきこけし[別冊]」の『伝統こけし工人系譜・産地別工人名簿・文献目録』には、小野川の項に岡崎昭一の妻女で、描彩のみ行う工人として記載されている。口絵写真は、そのせつこ作栄治郎型の顔のアップ。

前所有者のコメントによれば、「このこけしは昭和60年頃、津田沼の東武デパートで購入したものであり、木地形態が昭一工人と異なるので本人木地と推察する」とある。そこで、昭和60年前後の昭一作の栄治郎型と並べて見たのが、写真(2)である。

Setuko_eijiro_hikaku

写真は左から昭和59年11月3日、本稿のこけし、昭和61年1月4日、平成になってから。一列に並べて比べて見ると、せつ子こけしの木地形態が他とは異なるのが分かる。昭和60年前後の昭一こけしの頭は丸いのである。しかるにせつ子こけしは縦長で角張っている。昭一こけしで頭が角張っているのは右端のように平成になってから。だがその頃には、今度は胴の形態が鋭角的になっている。即ち、せつ子こけしは、胴は昭和59年頃の昭一こけしに近く、頭は平成の昭一こけしに近いということになり、昭一木地で頭と胴がせつ子こけしに合致する時期が見つからないのである。このことから、前所有者は木地もせつ子本人ではないかと考えたのであろう。しかし、木地がここまで挽けるのであれば、せつ子工人のこけしがもっと沢山出回っていても良いはず。そう考えると、何とも異色の栄治郎型と言うことが出来る。59年の昭一作と比べて、その面描は対照的ですらある。栄治郎型以外の作品も見てみたいものである。

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