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第603夜:英太郎(20歳)

Etaro_20sai_kao

今や3000本を越えるような数になっても、満遍なく集めてきた訳ではないので、蒐集品にはかなりのバラツキが出来ている。100本を越える工人もあれば、1本も持っていない工人もある。戦後の著名工人である佐藤英太郎もその一人であった。既に600夜を越えたこのブログで英太郎こけしは1度も出てこない。それは紹介するようなこけしを持っていないからである。もちろん、40年近くになる蒐集歴の中で、英太郎こけしを持っていたことは何度かあった。しかし結局手元に残らなかったのである。独自の領域を切り開いたと言われる本人型(木地人形)も、あまりに上手すぎる復元型も今ひとつ心に響かない。そんな中で行く着くところは、初期の英太郎こけしであった。口絵写真は20歳英太郎の顔アップ。

18歳、19歳の英太郎は、今やプラチナこけしになってしまった。数年前に「ひやね」に出た18歳英太郎は10万円を越えた金額でも落とせなかった。また、暫く前にヤフオクに出た19歳英太郎は何と20万円を越えてしまった。ここまで高騰する理由は何であろうか。まだまだあどけなさが残る18歳、これからこけしで生計を立てて行こうという意欲に満ちた19歳、そこに込められた少年英太郎の熱い気持ちが、こけしを通して見るものの心を打つからなのであろうか。

Etaro_20sai_syomei

写真(2)は、先日ヤフオクで入手した20歳英太郎。英太郎も20歳となると、その作行きは急速に下がってくる。本稿のこけしは、その署名と表情からまだ19歳に近い時期の作と思われる。大きさは6寸。頭は角張って大きく、頭でっかちでやや寸詰まりの印象を受けなくもない。目は顔の中央より下に描かれ眉との間隔が開いているが、溌剌とした明るい表情が魅力的である。頭部の赤い手絡と口、胴の梅模様にかなりの水濡れの跡がある。これが完品であれば入札価格も相当に上がったことであろうが、水濡れのお陰で3千円台半ばで入手できた。この英太郎こけしの表情は、これだけの水濡れにもかかわらず、それを一切感じさせない魅力を備えている。それは目を中心とした表情の強さが人を惹きつけるのであろう。「こけしは表情」と言うことを改めて納得させてくれる1本である。

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