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第615夜:伊豆定雄のえじこ

Sadao_izu_ejiko_kao

ここのところ、ヤフオクに戦前のえじこが出品されている。私も何点か入手することが出来た。何ヶ月か前に伊豆定雄のなかなか良いえじこが出ており欲しいと思っていたが締切時間を間違えて入札に参加することが出来ず残念に思っていた。先日、同じ出品者から、また伊豆定雄のえじこが出品され、今度は何とか入手することが出来た。このえじこ、実際に手にしてみると写真からでは分からない発見があった。今夜はその紹介をしたいと思う。口絵写真は、そのえじこの顔アップである。

伊豆定雄は明治38年、尾花沢市銀山に生まれた。大正11年と13年に木地講習会が開かれたのに参加し木地技術を身につけた。こけしは大正末期から作っているが伝承は判然としない。オカッパの頭や三つ重ね菊は蔵王系、肩に段のある形態や横菊・正面菊などは鳴子系の影響と言われている。系統的には鳴子系や雑系に分類されている。昭和13年11月26日に没しているため、作品は全て戦前作となる。

Sadao_izu_ejiko_hikaku

写真(2)左が全体像。頭は縦長のラグビーボール状で、首が長く胴部にはめ込まれている。胴上部は大きく盛り上がっており、全体を赤く塗りつぶしている。胴には旭菊を3つ、2つは上向きに、1つは下向きに描いている。上下1つずつの旭菊には左右に1対の葉を添えているが、上向きの1つには水の流れのような流線を3本、緑で描いている。頭はオカッパで頭頂部には薄墨の中剃りがあるが、えじこのためか頭髪は上部だけで、一般のこけしのように側部と後部には髪はない。その代わりに3筆の小さな鬢が描かれている。目尻が下がった大きな瞳が何ともユーモラスで洒脱である。と、ここまでは普通のえじこの説明であるが、このえじこ、中にガラが入っており、振ると音がするのである。このガラは首の穴から入れたようだ。そして、もう1つ。このえじこ、置いてみるとグラグラするのである。そこで何気なく回して見ると、写真右のように実に良く回る。このえじこは、実は独楽の役割も持っていたのである。ガラ入りの独楽えじことは、何とも楽しいえじこである。

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