第605夜:自由人2日目(希三16年)
写真(2)カラー部右が昨夜紹介した昭和14年の希三こけし(8寸)で、左が本稿の16年作の希三こけし(尺)である。木地形態から描彩に至るまで、その違いの大きさに驚かされる。同一工人の作で、この間2年に満たないのである。言い換えれば、1年ちょっとで当時の鳴子の標準的なこけしになったとも言えるのだが。「こけし辞典」では、『昭和15年ころになると、描彩も達筆になり、張りのある作風に変化した。<加々美>掲載の2本はこの時期のこけしで、完成度の高い傑作である。』と評されている。写真(2)モノクロ部に<加々美>の写真を借用した。大(右)9寸9分、小(左)6寸6分で、小が昭和15年前半、大が15年後半とある。従って、本稿のこけしは、この<加々美>の大こけしを引き継いだものと言えるだろう。面描は筆が良く延び気品がある。<加々美>の胴には黄色が塗られているようだが、本稿のこけしはケヤキ材のためか黄色は塗られていない。胴模様は竹雄が大寸物に描いた、菱菊の間に横菊を2輪並べて描いた模様になっている。後年、希三こけしは尺以上では菱菊の上部に菊を重ねた独特の様式となるのだが、それは、本稿の胴模様の様式を抽象化したものと言えなくもない。
写真(3)は戦後の希三こけしの変化(こけし手帖478号より転載)である。右から昭和26年、28年、35年、平成10年作。この戦前と戦後の希三こけしの変化には更に驚かされる。戦争というものが工人に与えた衝撃の大きさを物語っているようである。今まで、失礼ながら希三こけしには殆ど興味がなかった。戦前の2本のこけしのお陰で、希三こけしに目を向けることが出来た。こけし追求の楽しみは尽きないものである。
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コメント
みちのくにいらっしゃると思っていたら、お姿見かけなくて体調が優れないのかしら、と心配していました。希三さんのこけし、前回から引き続き、興味深く読ませていただいています。こんなにこけしについて深く掘り下げてくださる読み物は、そうありません。これからも、どうぞ長く永く、続けてくださいませ。
投稿: kuma | 2011年10月 4日 (火) 03時48分
kuma様
コメントありがとうございます。
kumaさんのように熱心に読んでくださる方々のお陰で、このブログも続けていくことが出来ます。これからもよろしくお願い致します。月初めはこけし手帖の編集があって出掛けることが出来ないのです。残念ですが…。
投稿: 国恵志堂 | 2011年10月 4日 (火) 08時32分