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第604夜:今日から自由人(希三14年)

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今日から10月、昼間の日差しは未だ強いものの、辺りの景色はすっかり秋めいてきた。昨日で37年半勤めた「会社人」を卒業して、今日から「自由人」となった。名前の前に会社の冠が無くなった分軽くなったが、会社というバリアも外れて、全責任が自分自身にかかってくることになる。「自由」との引き換えである。昨夜は会社人最後のヤフオクで、鳴子の大沼(後藤)希三の戦前作を入手した。希三のこけしはつい先日ゲットしたばかり。今回もこけしの格言に漏れず、希三こけしが続いて出てきたことになる。さて、今夜は、先日ゲットした希三のこけしの紹介である。口絵写真は、その希三の顔アップ。

鳴子系の後藤(大沼)希三は明治41年、鳴子の生まれ。大沼新兵衛の家で育ったため、戦前は大沼希三で知られていた。小学校卒業後、県立工業講習所に入り丹野勝次について木地挽きを習う。こけし製作は昭和10年頃からで、物産会社時代に一緒に働いていた大沼竹雄の影響を受けている。初期のこけしの文献での紹介は「こけしと作者」に見られる。丸い頭で眉目は左右に離れ、胴は中央部の反りが大きく、簡素な菊模様を描いている。この様式のこけしは「愛玩鼓楽」にも載っている。

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写真(2)が本稿のこけし(8寸)で、「こけしと作者」掲載品とほぼ同時期、昭和14年作、希三の初期のこけしと思われる。希三のこけしは竹雄の影響が強いと言われているが、このこけしを見る限りでは、その影響は感じられない。こけしに関しては特定の師匠がいないため、当初は見取り学問で作り始めたと思われる。反りの大きい胴、胴上下の深紅の太いロクロ線などは、戦前の鳴子こけしではあまり類例が見当たらない。面描は眉と目が左右に離れ、鼻と口は下方に離れている。手慣れていないが野趣溢れる表情となっている。鬢飾りは付いていない。希三のこけしは、この後、竹雄の影響を受けて急速に変わっていき、14年の後半には別人のように整ったこけしに変貌する。従って、この種の希三こけし半年ほどしか作られなかったものと思われる。

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コメント

会社人卒業 及び 自由人生活スタート おめでとうございます。
これからはこけし三昧の毎日ですね。

投稿: :☆:*・*:☆:*・*:☆: | 2011年10月 1日 (土) 18時07分

コメントありがとうございます。
こけし三昧ならいいですが、こけし中毒になったら困りますので、
こけしも他のことも程々にして、自由人を楽しみたいと思います。

投稿: 国恵志堂 | 2011年10月 1日 (土) 18時36分

37年半ですか・・・、お疲れ様でした。
私はまだまだ初心者で、いつもこちらで勉強させて頂いております。
これからも楽しいお話楽しみにしています。

投稿: みた | 2011年10月 1日 (土) 22時01分

お疲れ様でした。

投稿: しょ〜じ | 2011年10月 1日 (土) 22時59分

みた様
コメントありがとうございます。
会社人には定年退職がありますが自由人にはありません。
際限なくこけしを楽しめるのは至高の喜びですね。

投稿: 国恵志堂 | 2011年10月 1日 (土) 23時08分

しょ~じ様
コメントありがとうございます。
いつも見て頂き、間違いなども指摘いただいて感謝しています。
これからもよろしくお願い致します。

投稿: 国恵志堂 | 2011年10月 1日 (土) 23時11分

こけし中毒になったら困るなんて…
もう十分に中毒でいらっしゃいますよ(^.^)

投稿: 玉ちゃん | 2011年10月 2日 (日) 17時36分

玉ちゃん様
そうですかね。
未だ未だ普通の愛好家程度だと思っていますが。
何しろ、こけしの奥は深いものですから、先は分かりませんね。

投稿: 国恵志堂 | 2011年10月 2日 (日) 18時21分

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