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第638夜:今年最後のこけし(松三郎)

Matu3_s15_kao今年も余すところ4時間ほど、こけし界にとっても激動の1年だったと言えるだろう。そこで、この1年を振り返ってみようと思う。やはり1番の出来事は東日本大震災であろう。これによって全てのものが変わってしまった。土湯こけし祭りや白石のコンクールを始め多くの催し物は中止となり、佐藤誠孝一家や高橋通夫妻は今だに避難生活を余儀なくされている。土湯や鳴子は被災者の避難地となり、反面観光客は激減。廃業する旅館もかなりの数に上ったようだ。そんな年の最後を飾るこけしとして、安らぎを与える戦前の松三郎を選んだ。

暗い話題の多い中、こけし界としては明るい話も出てきている。1つは若い愛好家の増加である。この1,2年で、東京こけし友の会でも若い会員が着実に増えて来ており、毎月の例会でも1/3を占めるほどになっている。これら若い方々は活動的で、こけしの本の製作や催し物などにも積極的に参加している。このような風潮はマスコミ界にも及んできて、新聞や雑誌で、こけしが取り上げれることも多くなった。デパートなどでも実演の話が出てきたようだ。

ネットでのこけしの流通も盛んになっている。特にヤフオク(ヤフーオークション)には常時1000件ほどのこけしが出品されており、こけし入手の手段として利用されているようだ。特に今までは一部のマニアの間だけで流通していた古品(戦前のこけし)も多く出品され、思わぬ良品を入手することも可能となっている。

このようなネット販売の影響もあってか、こけしの価格は二極化が進んでいるようだ。戦後のこけしブーム期に作られたこけしがネットでは千円に満たない価格で取引されている一方、「ひやね」の入札では百万円を超える古品も出ている。戦後の入手難こけしの最右翼であった津軽系のこけしも手頃な価格で入手できるようになった。デパートの階段を駆け上って、僅かなこけしを競い合って入手した昭和40年から50年代の頃が嘘のようだ。

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写真(2)は伊藤松三郎の昭和15年頃のこけし。松三郎としては標準的なこけしで、特に珍しい訳ではない。伏し目がちな表情の実に静かなこけしである。激動の1年だったからこそ、最後を締めくくるのに相応しいこけしだと思う。

今年は494夜からスタートし、638夜で終了となった。昨年から144夜を積み重ねたことになる。これもひとえに毎夜ご覧頂いている皆様方のお陰である。ここに改めて、御礼申しあげます。1年間、ありがとうございました。それでは、皆さま、良いお年を!

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コメント

この1年間記事の更新ご苦労様でした。いつも楽しく拝見させていただき感謝します。毎回テーマをみつけ論究するのは大変なことと思います。また友の会の例会報告はタイムリーで、頒布こけしや入札こけしを写真で紹介していただけたのは、記録として残りますので良かったと思います。これからも正統派(?)こけしの楽しみ方を広めていただき、若いファンがどんどん増え、こけし界がますます活気づくよう念じています。
今年最後のこけしに「松三郎」いいですね。今の気分にまさにぴったり合うような気がします。その静かな表情は向き合ってみると落ち着きと癒しを与えてくれそうです。

投稿: chikomei | 2011年12月31日 (土) 23時15分

chikomei様
いつも読んで頂いて、ありがとうございます。
内容はともかく、続けることも大事かと思い何とか頑張っています。若い方のブログは活発ですが、我々の年代のブログは停滞気味なのが寂しいですね。来年は多くの方が参加されると嬉しいですが。来年も、よろしくお願い致します。

投稿: 国恵志堂 | 2011年12月31日 (土) 23時32分

今年も一年間楽しく拝見させて頂きました。東日本大震災の時、自分は職場で被災しましたが、激しい揺れの中で抜き差しならぬ事態を肌で感じていたものの、これほど深刻な事態(特に原発事故)に陥るとは夢にも思いませんでした。こけしのふるさと東北の完全復活が早く来る事を願って止みません。それでは良いお年を・・。

投稿: 益子 高 | 2011年12月31日 (土) 23時32分

益子様
1年間、ありがとうございました。
大震災は本当に大変でした。私も職場に泊まりましたが、あれほどの大災害になるとは思いませんでした。
来年は良い年になるといいですね。
よろしく、お願い致します。

投稿: 国恵志堂 | 2011年12月31日 (土) 23時44分

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