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第637夜:忠のこけし(2)

Akicyu_s15_kao28日に笹森工人の作業場で火災が発生し、作業場全焼、母屋にも被害があったとのこと。笹森さんや奥さんには怪我はなかった模様だが、材料、工具も燃えたため、こけしの製作は当分難しいと思われる。年も押し詰まったこの時期のこと、笹森さんには心からお見舞い申し上げます。さて、今夜は先日のヤフオクで入手した秋山忠のこけしを紹介したいと思う。忠のこけしについては第566夜で尺物を紹介しているが、今回は趣の異なる8寸物である。口絵写真は、その忠こけしの表情アップ。

忠のこけしを文献等で眺めていると、味わいの異なる2つのタイプがあるように思える。1つは、胴は太めで、表情は前髪が大きく眉・目は鋭角的で、下目のはにかんだような表情のこけしであり、大寸物に多い。もう1つは、胴は細めで眉・目の位置が高く、溌剌とした表情のこけしである。

Akicyu_s15_hikaku

写真(2)左は第566夜で紹介したもので、前者の特徴を備えているもの。そして、写真(2)右は本稿のこけしで、後者の特徴を備えているものである。忠のこけしは昭和10年頃からのものが知られているが、前者の方が古く、後者の方は新しいようだ。前者は昭和13年頃までに多く、後者は昭和14、5年と思われる。前者に比べ、後者は洗練された感じがあり、戦前のこけしブームで作り慣れた結果なのかも知れない。写真(2)右の作は、胴模様も珍しい。忠の胴模様は、写真(2)左のような菱菊が多く、中・小寸ものでは楓模様も描かれる。しかし、本稿のこけしの胴模様は、旭菊のように描かれており、他の鳴子系工人にも類例を確認出来ない。戦前の胴模様の多用さを示すものとして興味深い。

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