第661夜:幸九郎のこけし(2)
幸九郎については、第536夜で大小2本のこけしを紹介した。写真(2)左が536夜のこけし(8寸3分)で、右が本稿のこけし(8寸1分)で保存状態はとても良い。いずれも幸九郎としては晩年に属するこけしである。それでも子細に見ると違いはある訳で、幸九郎こけしの変化を伺うことは出来る。先ず木地形態、左で見られた肩口からの滑らかな曲線が、右では単調になっている。頭も右は頭頂部が小さく丸くなり、頭と胴とのバランスは小さく纏まった感じである。左に見られるフォルムの大胆さが無くなったのは残念である。次に描彩。胴模様はロクロ線の巻き絵であるため差ほどの違いは感じられないが、頭部のベレー帽は左では中心から紫、緑、赤、紫と太い線を重ねて重厚さがあるが、右では緑が2本の細い線に変わったために軽い感じを受ける。面描では、本稿のこけし(右)は眉・目が中央に寄って近視眼的になり、左のような大らかさが無くなった。また、半円状の前髪飾りも密になり、鬢は平筆で固く、赤と緑の鬢飾りも数は増えたが細く弱くなっている。このように、右のこけしは左に比べて全体的に作行きが落ちており、昭和10年代末頃の作ではないかと思われる。
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コメント
粂松残念でしたね。最初に千円で札を入れたのですが、最終にこんな金額になるとは思いませんでした。どうしてなのですか。出品者が
千円で出したのですから、千円で良いのだろう。されどこけしだから
なのでしょうか。腑に落ちない愚痴です。下らないことを書いていると書いておりますので無視してください。
投稿: 2765 | 2012年1月30日 (月) 18時01分
2765様
粂松は昭和15年から18年の3年間のものしか知られておらず、その数が少ないという希少性、その少ない1作毎に異なる表情を持つ多様性、しかもその表情が持つ独特の情味が人を惹きつけるのでしょうね。上限のない入札なので、どうしても欲しい人が二人以上いれば、価格は鰻上りになります。最終的には懐具合との勝負なので金持ちには適いません。でも、千円以下でも良いこけしは沢山ありますから、そういうこけしを選ぶのも、入札の楽しみですね。
投稿: 国恵志堂 | 2012年1月31日 (火) 08時41分