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第662夜:ピーク期のこけし(横山政五郎)

Masagoro_s29_kaoこのブログは「夜話」と言うことなので、本来なら夜に書かなければならないのだが、夜間に用事があったような場合、翌日の午前中に前夜分を書くこともある。今夜もそうなってしまった。歴史の浅い「伝統こけし」の世界でも、既に『定評のあるこけし』というものが出来ていて、それは好き嫌いは別として気になるこけしではある。そして、出来れば手元に置いて、じっくり眺めてみたいと思う。今夜はそんなこけしの1つである横山政五郎のこけしを取り上げてみたい。口絵写真は、政五郎こけしの表情である。

肘折系の横山政五郎は明治27年、肘折温泉の生まれ。14歳で佐藤周助の弟子となり4年間の木地修業と1年間のお礼奉公をした。戦前のこけし製作は判然としない。戦後は昭和20年頃からこけしを挽き始めたというが、本格的な復活は加賀山昇次氏による「こけしの郷愁第七册(昭和29年7月)」での紹介による。その後、29年8月から30年初め頃の作が政五郎こけしのピークと言われるものである。政五郎こけしの変遷とピーク期の特徴については、「こけし手帖(81号)」と「木の花(第拾四号)」(いずれも中屋惣舜筆)に詳述されている。

Masagoro_s29_hikaku

写真(2)は本稿のこけしで大きさは5寸2分、1月の友の会例会で入手したものである。胴底に「29.9.12 例会」との書き込みがあり、昭和29年9月の東京こけし友の会の例会で入手したものと思われる。前述、加賀山氏による本格的な復活作は8月なので、それから間もない頃の作と言える。本稿の作は、ご覧のように前面の退色が激しく、緑と紫は殆ど消失している。ロクロ線は写真(2)右のように紫が使われていたのであろう。5寸という大きさのためか、やや小さめな頭にピーク期特有の細めの胴が美しい。政五郎こけしの神髄はその表情にあると言われる。筆が良く伸びた眉と切れ長の鋭い瞳がその中心である。小寸の本稿のこけしでも、その特徴は遺憾なく発揮されている。政五郎こけしとして十分満足のいくものではあるが、保存状態の良いものが欲しくなってしまうのは、コレクターの業であろうか。

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コメント

ここにお邪魔すると、毎回、見る事もかなわぬ工人さんのこけしを拝めます。詳細に渡る解説もありがたく、教科書のようにたびたび来させて頂いています。
夜でなくても、記事を上げて頂けると愉しみに参上いたします。

投稿: kuma | 2012年2月 3日 (金) 20時05分

kuma様
いつも、ありがとうございます。
自由人になって、昼間に記事をアップできるようになりました。
楽しんで頂ければ嬉しいです。

投稿: 国恵志堂 | 2012年2月 3日 (金) 22時15分

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