第666夜:吉太郎古作(1)
写真(2)が本稿のこけし(9寸)である。材質は朴か桐か。後頭部に「山形・米沢こけし」と縦に書き込みがある。これは前所有者のものと思われ、他のこけしにも同様の書き込みが見られた。「木の花(第拾五号)」によれば、吉太郎の米沢時代は、①鍛治町時代(大正6年~同10年)、②東町時代(大正10年~昭和初め)、③仲町時代(昭和初め~昭和13年)、④信濃町時代(昭和14年~昭和18年)に分けられる。現存する吉太郎最古の所謂「赤湯こけし」は東町時代の作である。この時期の作は少なく、吉太郎こけしの殆どは③、④のものであり、④のものには他工人との合作も多く含まれる。
本稿のこけしは胴が太く、吉太郎としては異色なこけしであり、各種文献で同様の作を探したところ、「こけし 美と系譜」の中に殆ど同じこけしを見つけることが出来た。同書の(74)の左から3本目のこけしで、大きさは27cm(9寸)、縦長の頭に胴裾が広がり気味の太い胴、胴上下には太いロクロ線があり、鼻が長い鋭い表情のこけしである。同書の解説では『吉太郎のは昭和初年作、米沢に永らく活動し兄弟中まず第一人者のこけし名人と云える。極めて達筆で艶麗な情味は京美人を思わせ、胴模様も流麗である。これは珍しく胴が太く彼としては未完の頃の物であろう』と。また、「木の花」では⑤のこけしが頭が縦長で胴が太い。同書では『⑤は④よりやや後のもので昭和4,5年頃のもの。頭がやや長く角ばり、胴が太く面白い形態である。面描は鼻が長く、目尻も長くつり上がり、吉太郎が一番描彩力のあった時期のものである』と。こちらは、大きさが尺1寸5分と大きいためか、胴のロクロ線の数も多くなっている。これらのことから、本稿のこけしは吉太郎の最盛期のこけしと判断して良いであろう。緑の色が殆ど消失しており、左即頭部にはヒビ割れがあり、面描の筆もやや薄くなっているのが残念ではあるが、良いこけしを入手できたものと思っている。
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コメント
7日に弥治郎こけし村に行って来ました(8日と書いたのは誤りでした。ごめんなさい!)
雛こけしは平賀輝幸さんのものを購入しました。(とっても可愛い!)
雛こけし弥治郎系はもちろんのこと、鳴子系、木地山系、その他多数ありました。
が・・・姪の子供に贈る使命感?から作家さんの名前より顔つきばかり見ていて詳細報告不能です。トホホ。
自分用に普通のこけし大量購入。
新山吉紀さん・星定良さん・鎌田孝志さん・新山実さん。
温麺を食べに寄った白石駅前でひょっと入ったおみやげ屋「きく文」さんで新山久城さん・瀬谷重治さんの作品に出会えて購入。
良い一日でした。
投稿: ピノ助 | 2012年2月 8日 (水) 20時03分
ピノ助様
弥治郎の雛こけし展、楽しそうで良かったですね。
私は未だ行ったことはないのですが、雛こけしは各工人さんの個性と工夫が出ていて、こけしとはまた違った良さ、面白さがあります。
白石の「きく文」さんは未だ健在なのですね。新幹線が通ってからは白石駅には行く機会が無くなってしまいました。
投稿: 国恵志堂 | 2012年2月10日 (金) 11時07分