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第691夜:正一のこけし初期作(自分史探訪①)

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自由人になって半年が経った。ようやく暖かくなってきたので、自分史探求の旅に出掛けた。私は生まれてからこれまでに何回か引っ越しをしているが、今回は先ず1回目ということで、生まれてから小学5年生まで住んでいた東京目黒区中目黒まで行ってみた。東急東横線中目黒駅を降りると桜並木で有名な目黒川が流れている。川沿いの桜はあと一息で開花という状況である。早めの昼食を済ませて小学4~5年の時に通ったそろばん学校へ。学校は往時のままの建物で健在であった。ついで、住んでいた場所へ。当時は4軒長屋であったが、今はアパートに変わっていた。それから1年間通った幼稚園へ。ここも往時の木造の建物がそのまま残っていてちょうど修理の工事をしているところであった。壊れた部分だけ直しながら使っているらしい。それは園としてのポリシーなのであろうか。何と外見だけでなく下駄箱から内部の机や椅子、物入れまで木製で殆ど当時のまま。当時とは昭和30年である。私にとっては、全く昭和の昔へタイムスリップしたようなものであった。都会の中にこのような場所が残っているとは・・・。そして、そのような幼稚園に通ったことに誇らしさを感じたほどであった。次いで、この辺りでは有名な祐天寺へ。ここも小学生の頃は良く遊びに来たものである。この祐天寺の直ぐ近くに、こけし店「つどい」がある。細い道を辿っていくと家の前でおばあさんが作業している。これが「つどい」の女主人であった。以前は良く通った「つどい」も最近はご無沙汰しており久し振りの訪問となった。こけしは玄関近くの一角に展示されていたが、なかなかに良いものがあり入手させて頂いた。その後、小学5年まで通った小学校の前を通り、中には入れなかったので、裏にある八幡神社から中を遠望して帰途に着いた。今夜は「つどい」で入手したこけしの中から佐藤正一を取り上げた。口絵写真はその表情である。

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写真(2)は私が通った幼稚園。建物は昔のままの木造。この春休みを利用して、痛んだ部分の修理工事が行われていた。

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写真(3)は建物の内部。工事中のため、色々な備品が中央に集められている。手前中央や右端に積み上げられた小さな木製の椅子は、私が幼稚園の頃に使ったものと変わらない。昭和30年代の世界だ。

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写真(4)は佐藤正一のこけし。左が今回入手した8寸。米浪旧蔵品である。「つどい」でこのこけしを見て釘付けになってしまった。正一のこけしはかなり持っているが、このこけしはそれらとは全く雰囲気が違ったからである。昭和20年代の中頃以降の正一こけしの作風はほぼ掴んでおり、本ブログでも度々取り上げているが、どれとも異なる。木地形態は頭が小さく、胴は太めのエンタシスとなっている。頭頂部の黒蛇の目は大きく、そこから下がる前髪は短く、ほぼ垂直に下がっている。眉毛は雄大で、目は顔の下から1/3ほどの下方に描かれ、大きな鼻と口は首にくっつきそうだ。凄い下目のこけしなのである。通常これほど下目のこけしは単に可愛いだけのこけしになりがちであるのだが、この正一は結構迫力のある顔をしている。写真(4)右に下目のこけし(昭和28年作)を示す。同じように下目のこけしであるが、右のこけしは愛らしい顔になっている。これは目尻が下がっているせいであろう。左のこけしは下目であるが目尻は下がっていない。また、正一の胴の紫波線は右のように太く湾曲も大きいのが普通なのだが、左は細く湾曲も少ない。

そこで、文献・図録を調べてみると、「愛玩鼓楽」に2本の正一初期作が掲載されていた。42番と43番の2本で、特に42番は頭の形はやや異なるものの本項のこけし同様の下目のこけしである。同書の解説によると『8寸3分、昭和17年1月 *底に「福島県信夫郡土湯村字油畑30番地 昭和17年1月元旦 佐藤正一作』の書き込みあり。このように几帳面なところはそのこけし作りの丁寧なこととあいまって、生涯変わらぬ特性であった。正一の初作で太治郎写し。丸爪使用』とある。晩年の太治郎こけしは相当の下目であり、正一の初期こけしが、それをそのまま引き継いだことが分かる。この「愛玩鼓楽」の2本、胴の形態と独特なロクロ線模様は本項のこけしと殆ど同じである。表情のみ本項のこけしよりも甘く愛らしいこけしとなっている。本項のこけしは胴底は丸爪で署名は「佐藤正一作」のみ。「愛玩鼓楽」の作品郡の1つなのか、それより多少後の作品なのかも知れない。いずれにしろ正一の初期作と言えるこけしであろう。

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コメント

すごい顔!
なんていうか…すごい顔。
強烈ですね!


幼稚園は昭和30年よりももっと古そうですね。
私は国恵志堂さんよりずっと若いと思いますが、もう通っていた幼稚園はマンションになってしまいました。
こんな素晴らしい幼稚園が中身ごと丸ごと残っているなんて素敵です。

投稿: :☆:*・*:☆:*・*:☆: | 2012年3月31日 (土) 21時31分

☆様
この正一、目力があります。見つめていると引き込まれてしまいそうです(苦笑)。
実は、この幼稚園の建物、何とトイレの中に木が生えているのです。今時、信じられますか? 園庭には樹齢数百年と思える大きな木が1本立っていて、トムソーヤの冒険を思い出します。

投稿: 国恵志堂 | 2012年3月31日 (土) 22時30分

トイレの中に木が…

祖父が済んでいた家が、壁の外側にチューリップ便器がついていて、庭の木と家のひさしを無理矢理トタン屋根でつないでトイレの屋根にしてありました。
汲み取り式の和式トイレは家の中にあったのですが。
ちなみにその家はゴエモン風呂でした。
私のように、その幼稚園の園児も『木の生えたトイレ』を大人になっても忘れないでしょうね。

投稿: :☆:*・*:☆:*・*:☆: | 2012年4月 1日 (日) 09時37分

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