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第697夜:安太郎74歳

Yasutaro_74sai_kao山形系の鈴木安太郎のこけしは第576夜でその戦前作を紹介した。角張った頭に直線的な眉、目、鼻を描き、ロボットのような茫洋とした表情と、赤と緑の細いロクロ線を胴上下に配し、その間に簡素な赤い花を大きく描いた描彩が良くマッチして、古風さの中に風格を湛えたこけしだと思っている。昭和18年頃まで作成していた安太郎は戦後は昭和30年に復活して以後長くこけしを作っていた。今まで戦後作についてはあまり興味を持っていなかったが、先日久し振りに74歳作を入手したので紹介したいと思う。口絵写真は、その表情。

Yasutaro_74sai_hikaku

写真(2)の左3本が74歳の安太郎(大2本は8寸、小は5寸6分)、右は戦前(昭和13年)の安太郎。戦後の作品として先ず目にしたのは左端のこけし。眉と目がかなり離れた下目で鼻も短い。いわゆる可愛らしいこけし、右端の戦前作のイメージが頭にある私にとっては特に注目するものでは無かった。真ん中に2本は先日入手したもの。胴底には左端と同様に74歳との本人署名がある。同じ74歳でも、左の2本を比べると作行きに相当の差が感じられる。左から2本目の8寸では、目も上方にあり鼻も長くて張りのある表情である。戦前作とは雰囲気は異なるが、大らかで好ましい表情である。特に右から2番目の小寸は頭もやや角張り、胴の木地形態も戦前作に近い雰囲気を持っている。この小寸が戦前作を意識していると思われるのは、胴模様の緑の葉(茎か?)の様式である。左2本は3筆の両側2本が丸まっているが、この小寸は3筆とも直線的で、これは右端の戦前作と同様の描法なのである。ぼってりとした赤い花も好ましい。中央の2本は74歳でも早い頃、左端はそれより遅い時期のものと思われる。同じ74歳作でもかなりの違いが見られるのである。

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コメント

始めまして(たしかそのはずです)。
いつも未だ持っていない「こけし辞典」代わりに
拝見させていただき、勉強中の初心者でございます。
さて、最近私が入手した安太郎は七十七才のものですが、
面描はどちらかといえば真ん中の2つに似ています。
左端の方が古い時期、かもしれませんね。

投稿: mu1300 | 2012年4月16日 (月) 00時19分

mu1300様
いつもご覧頂いてありがとうございます。
そうですか。77歳の作をお持ちですか。
その77歳の作が真ん中2本と似ているということは、左2本の違いは作った時期の差というより、安太郎が意識的に描き分けたのかも知れませんね。私は70歳以降のものはこの3本しか持っていないので、それ以外の作は何とも言えないのですが、まだまだ勉強が必要ですね。こういうことを調べるのも、また楽しいものです。

投稿: 国恵志堂 | 2012年4月16日 (月) 08時53分

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