第704夜:こけしの巡り会い(石川篤次郎)
先日、同好のKさんと弥治郎の黄色いこけし(新山系列のこけし)を眺める機会があった。その折、2本のこけしが非常に良く似ていることに気付いた。1本は第651夜で紹介した福太郎のペッケ、そしてもう1本が今夜紹介する石川篤次郎のこけし(ペッケ)である。篤次郎のペッケは描彩の細部まで福太郎とそっくりであり、たまたま似ているという訳ではないようだった。そこで篤次郎の購入メモを見ると、日付は「S62.12.13」。友の会の例会の日にあたるので、こけし手帖を見てみると、「O元会長所蔵の福太郎の復元」とある。似ている福太郎は友の会の入札で入手したもので、これがO元会長の所蔵品(久松旧蔵品)であった。復元品とその「原」が20年以上も経って巡り会ったのである。口絵写真は篤次郎ペッケの表情。
石川篤次郎に関して、「こけし辞典」は『大正4年12月13日生。新山福太郎の弟子。昭和45年ごろより伝統こけし製作再開』と記しているに過ぎない。「伝統こけしポケットガイド」(昭和50年発行)では、もう少し詳しく『出身地は仙台市。昭和23年3月より2年間、建築業勤務の傍ら新山福太郎のもとで木地を修業。25年4月建築業の方は中止して白石後小路で独立開業。福太郎型は45年6月頃から製作。元来、福太郎型は一般ファンには理解しにくく、非常に苦しんでいるが、最近ようやく人気が出てきた』とある。
写真(2)左が福太郎の「原」で、右が篤次郎の写し。木地形態では「原」に比べてやや細身になっており、くびれ下の胴部が小さめで、裾部分の広がりもない。やはり福太郎の絶妙な形態と比べると見劣りがする。一方、描彩は胴の襟や裾を「原」に忠実に描いており、面描も福太郎の特長を良く捉えている。復元作としては成功の部類に入ると言ってよいであろう。それにしても、篤次郎の工房では一緒にいたであろうこの2本のこけしが、長い年月を隔てて再び巡り会えたのも何かの縁なのかも知れない。
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