第703夜:山尾武治のこけし(2)
写真(2)右が第500夜で紹介した昭和15年頃のこけしで左は戦後の昭和30年のこけし。そして真ん中が本項のこけしで、大きさは7寸。胴底に「昭.28.10.16」の書き込みがあり、昭和28年頃の作と思われる。左のこけしとは2年程しか離れていないため、全体的な雰囲気は左に近い。横広の大きな前髪、下部が外側に向いた横鬢などで、眉・目も戦前に比べて湾曲が少なくなっている。但し、目の位置は顔の中央よりやや上であり、上下の瞼は良く伸びており、黒目がちな点は戦前作に通じる雰囲気を残している。また、頭が小さく胴長ですらりとした形態は戦前作に通じる。胴上下のロクロ線は紫であるがかなり退色しているのが惜しまれる。戦後も20年代迄は未だ戦前の風情を残しているが、30年代に入ると甘さが強くなって特徴の乏しいこけしになってしまう。
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コメント
秋保の山尾さんの所のこけし、また独特の風貌ですね。
最近、秋保の旅館で山尾家のこけしを拝見しましたが、確かにおっしゃるように猫彩がだいぶ変化してきているのが、並べていただくと良くわかります。
投稿: kuma | 2012年5月 7日 (月) 09時23分
kuma様
武治は戦後もこけしを沢山作っていますが、新しいものほど特徴に乏しい現代風の表情になっていますね。これは、作っているその時代時代の影響を受けているのでしょう。武治の後継者達もその流れの中にいます。何とか、武治の戦前のようなこけしを作って貰いたいものです。
投稿: 国恵志堂 | 2012年5月 7日 (月) 20時53分