第710夜:蔦作蔵の髷こけし
弥治郎系の蔦作蔵は明治25年の生まれ。明治31年、7歳の時に両親が亡くなったために里子に出された。その後、明治40年、16歳の時に佐藤勘内の弟子となり木地修業を始めた。こけしは主として勘内の父栄治に習い、大正2年4月より小野川温泉で独立・開業した。作蔵は、栄治伝来のこけしの他、戦前からモンペこけし・髷付き・かんざし付き等、各種の変形こけしも作り、当時の新型の魁となった。
写真(2)は作蔵の髷こけしである。左から5寸、3寸、1寸(2本)である。この髷こけしは頭に髷を付け、胴模様は前垂れの着物で、胴全面の小さな花模様を描いている。「愛玩鼓楽」には戦前の髷こけしが豆こけしも含めて多数掲載されているが、頭頂部の髷は一様に平たい。写真(2)の左2本は髷が大きくなっており、戦後のものであろう。
写真(3)は写真(2)の1寸豆こけしを大きく写したもの。左のこけしには胴底に「小野川」の書込みがある。この2本はヤフオクに2本一緒に出品されたものを入手したものであるが、木地形態、描彩にやや違いが見られる。「愛玩鼓楽」には同様の1寸豆こけしが2本掲載されており、それらは昭和10年作となっている。但し、本稿の左のこけしは髷の大きさや赤い飾り、目の大きさや頬紅などから、やや後(昭和14年頃)の作かも知れない。
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コメント
大寸は作蔵らしくない不思議なこけしですね・・・
投稿: しょ〜じ | 2012年5月26日 (土) 07時00分
しょ〜じ様
コメントありがとうございます。
一応胴底に「蔦作蔵」と書込みがあったので、作蔵としましたが、どうなんでしょうね?
戦後の作蔵の作例をあまり知らないので、私もよく分かりませんが…。
投稿: 国恵志堂 | 2012年5月26日 (土) 23時47分
可愛らしいですね!
花柄の前掛けと言い、髷の大きさと言い。
お顔もきょとんとして。
どなたか、このこけし作っていないものでしょうか。
投稿: kuma | 2012年5月28日 (月) 22時23分
kuma様
カメイ美術館の「最新工人録」改訂版に、小野川の蔦文男さん(蔦作蔵長男)が載っており、髷こけしの写真もあるので、頼めば作ってくれるのではと思いますが…。
投稿: 国恵志堂 | 2012年5月30日 (水) 18時07分