第731夜:芳蔵本人型(戦前)
戦前の芳蔵は善吉型を作っていないので、全て本人型ということになる。戦後の本人型については第163夜と209夜で目の描法の異なる2作を紹介した。同じ本人型であっても、戦前と戦後の作とでは雰囲気も異なり、何とか戦前の本人型も手に入れたいと思っていたので、良い機会であった。
写真(2)に戦前と戦後の芳蔵本人型を示す。左は第163夜で紹介した戦後作(8寸2分)、右が本稿の戦前作(9寸9分)である。戦後の本人型は直胴が多いが、戦前作は肩がコケ、胴も括れたものも多い。胴模様も、戦後は牡丹を縦に並べただけであるが、戦前は牡丹を重ねたりして模様に変化を付けている。そして一番の違いは、やはり顔の表情であろう。戦後作はあどけなく愛らしいがちょっと弱い感じも漂う。一方戦前は、眉太く、上下の瞼の描線にも勢いがあり、溌剌とした若さが感じられる。
写真(3)に頭部の蛇の目模様と横鬢の違いを示す。戦前作の頭頂部は、真ん中の黒い円形が大きく、その回りに赤い輪を細めに入れているが、戦後作では真ん中の黒円は小さくなってその外側の赤い輪がやや大きくなり、黒円との境目には緑のロクロ線が入る。鬢に至っては、下部を赤いリボンで結んだお下げ髪状となる。技巧的になったと言えるのかも知れない。
| 固定リンク
「土湯系」カテゴリの記事
- 第990夜:「日本の郷土玩具」展(2015.01.10)
- 第988夜:二代目虎吉のこけし(2015.01.05)
- 第984夜:初期作の味わい(勝英)(2014.12.21)
- 第983夜:42年の弘道こけし(2014.12.19)
- 第981夜:友の会12月例会(H26年)(2014.12.14)
「古品」カテゴリの記事
- <番外>こけし談話会(2015.05.11)
- 第1000夜:ステッキこけし(小関幸雄)(2015.04.19)
- 第999夜:極美古品(伊豆定雄)(2015.04.13)
- 第998夜:佐藤慶治のこけし(H27花見)(2015.04.01)
- 第997夜:鶴松のこけし(2015.03.28)
「中の沢亜系」カテゴリの記事
- 第912夜:橘コレクションのこけし(酒井正進と安藤良弘)(2014.03.01)
- 第854夜:瀬谷重治のギボシ(2013.09.11)
- 第853夜:幸治さんの近作(2013.09.09)
- 第744夜:本多信夫のこけし(2012.07.20)
- 第733夜:瀬谷幸治の芳蔵本人型(2012.06.27)
コメント