第746夜:武蔵古作
いよいよオリンピックが始まった。日本は開会式前の男女のサッカーが勝利という最高の滑り出し。これから暫くは昼夜逆転の生活になってしまうのでは・・・。もっとも深夜のテレビ観戦には未だ身体が付いていかず、せっかくのサッカーのゴールシーンは見損なってしまった。さて、今夜は先日入手した武蔵の古いこけしである。古いこけしのことを良く「古作」と呼んだりするが、その定義はどうなんであろうか。戦前作=古作というのも何となくしっくりしない。そこで個人的には、昭和1桁以前を古作と考えている。今回の武蔵は、その古作の資格を満たしているようだが、何せ相当に黒くなっておりネットの写真では何とも判断できない。そこでぜひ原物を見て見たいと思ったのである。口絵写真は、その武蔵の表情である。
写真(2)は、左が本稿のこけし(8寸2分)で、右は中屋氏旧蔵のこけし(正末昭初、8寸)である。胴の長さはほぼ同じであり、頭だけ本稿のこけしが一回り大きくなっている。また、胴もやや太く中剃りも大きいようだ。
この2本は雰囲気的には非常に良く似ており、その頭部を改めて比較したのが写真(3)である。頭の形は蕪型で、左の本稿のこけしの方が横長の平頭になっている。描彩は、本稿のこけしは木地が黒くなっている上に墨の描彩が薄くなっていて見難いが、殆ど右の中屋武蔵と同じ表情と言ってよいであろう。前髪の中央部の出っ張りが、眉・目の中央ではなく、向かって右に寄っている点にも注意されたい。頭頂部の赤い水引も同じ描彩である。
胴の木地形態は、本稿のこけしがやや太く、胴中央部の湾曲もやや大きい。中屋武蔵の方が直線的である。鉋溝は胴下部に1本あるが、中屋武蔵の方が上方にあり、裾部の赤ロクロ線も本稿のこけしよりも太くなっている。一方、胴上部の赤ロクロ線は本稿のこけしより細くなっており、上に薄く下に厚いロクロ線の構成は絶妙である。本稿のこけしでは上下のロクロ線の太さはほぼ同じである。
次に胴模様であるが、これは両者でやや違いが見られる。一番目に付くのは、三段重ね菊の一番上の花芯が、中屋武蔵で寝ているが、本稿のこけしでは立っている点であろうか。最も、中屋武蔵も中央の花弁の花芯は立っているので、何とも言えないが・・・。最も顕著な違いは蔓の描法である。
写真(4)は胴の右側面を較べたもの。右の中屋武蔵では、先端の垂れ下がった蔓が2本描かれている。一方、本稿のこけしでは、蔓は上部の1本だけで、先の垂れ下がりも少なくなっている。このようなことから、本稿の武蔵は、中屋武蔵よりはやや後の作、昭和初期のものではないかと推測される。
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