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第757夜:高瀬善治のこけし(戦前と戦後)

Takazen_senzen_kao十和田湖の高瀬善治のこけしも気になるこけしの一つではあったが、なかなか入手するに相応しい作品に出会わなかった。ようやく今年6月に昭和22年という作を入手したところ、8月には戦前作を、これもヤフオクで手にすることが出来、善治の戦前から戦後にかけての作風の変化を直に鑑賞することが出来た。今夜は、その善治のこけしを紹介したい。口絵写真は戦前善治の表情である。

高瀬善治は明治33年、十和田村の生まれ。17歳の時に小林弥七について木地修業をし、こけしも習ったという。大正7年に独立開業。現存こけしは昭和7、8年頃以降のもので、それ以前のものは確認されていない。十和田湖では、大正年間から昭和にかけて小松五平や大沼竹雄などのこけしが売られていたと言う。善治のこけしは師匠が同じ長谷川清一や小松五平の影響があるのであろう。

Takazen_senzen_hikaku_2

写真(2)の左が昭和22年のこけし(8寸3分)で、右が戦前のこけし(8寸)で『愛玩鼓楽』の(861)とほぼ同種、昭和14年頃の作であろう。『愛玩鼓楽』の解説では、胴底に「高瀬善治」のゴム印が押されていると記載されているが、これは写真(3)右のようなものと思われる。「こけし辞典」の解説では、『初期の作品はオカッパで長めの頭、首に段がなく牡丹模様も筆致太く均整のとれた形態とともに佳作。優品はこの初期のものに多い。その後、昭和15年ころより平頭で前髪をつけ、オカッパでなくなる。首に段をつけ、胴模様の筆致弱まり、胴の木地も太めになり、凡作になった。』とある。右のこけしは、オカッパで平頭、肩に段が付いているが、胴は細くすっきりしていて、良い時期の面影を残している。左の戦後作になると、頭はオカッパではなくなり、木地形態も全体的に太くなっている。筆も太くなって緊張感は乏しくなるが、これはこれで大らかで逞しい良いこけしと言えるだろう。なお、胴模様下部の茎葉は戦前作は平行に描かれるが、戦後作では交差してくる。

Takazen_senzen_syomei

写真(3)に胴底の署名を示す。戦前は、胴底は鋸での切り離し、戦後はロクロの四つ爪跡が確認出来る。

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コメント

素晴らしいこけしですね。
眼福です!ありがとうございます。

投稿: ピノ助 | 2012年9月13日 (木) 17時43分

ピノ助様
こんばんは。
普段あまり目立たないこけしにも見所はありますね。
これもこけし集めの醍醐味なんでしょう。

投稿: 国恵志堂 | 2012年9月13日 (木) 22時53分

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