« 第780夜:希三のこけし(3) | トップページ | 第782夜:渡辺忠蔵のこけし(本人型) »

第781夜:岡崎斎と鳴子共通型

Hitoshi_senzen_kao伝統こけしの11系統の中で、鳴子系はあまり人気がない系統である。最近の若い愛好家には津軽系や土湯系、また南部系などが人気を集めているようだ。鳴子系のこけしは最もこけしらしいこけしであるが、それが却ってどれも同じように見え、面白みがないのかも知れない。ところが戦前の鳴子こけしを見てみると、実に多様性に富んでおり、系列、家系によって実に様々な特色のあるこけしが作られていた。それが戦後になって画一的なものになり特色が薄れて、所謂「鳴子共通型」のこけしが多数を占めるようになってしまった。その「共通型」では、胴模様として「菱菊」を描き、その菱菊は岡崎斎によって確立された様式を真似たものと言われている。今夜は、その斎のこけしを見てみたいと思う。口絵写真は斎こけしの表情。

鳴子系の岡崎斎は明治30年鳴子の生まれ、岡崎仁三郎の長男である。木地は父が挽くのを見て自然に覚え、大正4年19歳の時、高橋寅蔵の職人となった。大正6年より一時仙台で働いたがのち鳴子に戻り、大正8年から自宅で木地業を行った。斎は大正時代よりこけしを作り、当初は蕪頭の岩太郎系列の特徴を持ったこけしを作っていたが、やがて丸頭で優美なこけしを作るようになった。特に、斎が描いた「菱菊」模様は、戦後の鳴子共通型の手本となった。

Hitoshi_senzen_hikaku

写真(2)の左が斎のこけしで大きさは9寸3分、昭和15年前後の作と思われる。この頃の斎こけしは、一側目の眼点が大きく、濡れたような瞳が印象的なこけしである。胴には薄く黄色を塗り、そこに上部には横菊を、下部には正面菊を配した「菱菊」模様を描いている。右の2本は昨夜も解説した希三のこけし。右が昭和14年、中央が16年の作。胴模様だけを較べても、右は大沼竹雄の胴模様とそっくりであるが、中央では、むしろ斎の胴模様に近いことが分かると思う。当時の斎の菱菊模様の影響力の強さが窺い知れる。

|

« 第780夜:希三のこけし(3) | トップページ | 第782夜:渡辺忠蔵のこけし(本人型) »

古品」カテゴリの記事

鳴子系」カテゴリの記事

コメント

昨今のこけしブームは昔からの愛好家にとっては嬉しい話ですが、鳴子系が不人気になってしまったのは鳴子党にとって、非常に残念な事ですね。所謂「共通型」の氾濫に対しての危惧感は鹿間氏監修のこけし辞典でも指摘がありますが、こういう形で表れるとは思いもよりませんでした。鳴子こそ「こけしの中のこけし」なのにねぇ・・。

投稿: 益子 高 | 2012年11月15日 (木) 19時26分

鳴子のこけしが人気がないわけではありません。盛、新兵衛、等にはオークションで高値がついております。

投稿: | 2012年11月15日 (木) 23時03分

古いものばかり入札する方にはわからないかもしれませんが!

投稿: | 2012年11月15日 (木) 23時12分

益子高様
鳴子こけしは目立つこけしではないので、注目を浴びにくい面があるのでしょうね。しかし、じっくり向き合ってみると実に味わい深いものがあります。多くの人に、その良さを分かって貰いたいものです。

投稿: 国恵志堂 | 2012年11月15日 (木) 23時32分

…様
入札だけが人気のバロメーターではないと思いますね。古品には古品の、新しいものには新しいものの良さがあります。いずれにしろ、鳴子こけしの話題で盛り上がってくれるのは、嬉しいことです。

投稿: 国恵志堂 | 2012年11月15日 (木) 23時40分

こけしを買い始めて1年になりますが、最近鳴子系のこけしが気になるようになりました。私の最近の好みは岩蔵型ですが、先日の高円寺のイベントでもJETLINKさんのブースに佐藤実工人のこけしがあり、人気ありました。こけし歴の浅い自分には、鳴子系はじわじわ良さが伝わってくる感じがあります。

投稿: yukaeru | 2012年11月17日 (土) 01時09分

yukaeru様
おはようございます。
私は鳴子系こけし大好き人間ですから、嬉しいです。
鳴子のこけしは一見すると同じようで面白みに欠けるようですが、じっくり見ているとその違いも見えてきて良さが分かってきますね。
岩蔵も斎も同じ岩太郎系列ですが、それぞれ独自の作風を確立して一家をなしています。並べて見ると結構違いがありますね。これからも鳴子系の深い味わいを楽しんでください。

投稿: 国恵志堂 | 2012年11月17日 (土) 08時40分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/188678/56118112

この記事へのトラックバック一覧です: 第781夜:岡崎斎と鳴子共通型:

« 第780夜:希三のこけし(3) | トップページ | 第782夜:渡辺忠蔵のこけし(本人型) »