第783夜:正一の初期太子型
写真(2)の左が本項のこけしで大きさ5寸2分の太子(地蔵)型、右は17年初め頃のこけし(第691夜参照)である。正一のこけしは昭和17年からのものが知られているが、17年の初め頃のものは「こけし辞典」掲載の2月作や写真(2)右のように、目が極端に下がった下目が特徴である。本項のこけしは、11月作で目がやや上がってきている。「木の花(第参拾号)」16頁に10月作の3寸が載っているが前髪以外の面描は同様である。写真(2)右と比べると、頭頂部はやや丸くなっている。顔の大きさに比べて目はやや大きめで黒目も大きいが素直で明るい表情である。横鬢も太くたっぷりと描かれており、力の入った作品となっている。胴は裾が窄まった太子型であり、赤の太いろくろ線と黒の細いロクロ線が強いインパクトを放っている。幼子の大きな瞳に引きこまれてしまいそうなこけしである。なお、太治郎のこけしでは「為書き」が書かれていることがあるが、本項のこけしにも為書きがあり、正一も太治郎同様、1本1本丁寧にこけしを作っていたことが窺い知れる。
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