第780夜:希三のこけし(3)
今夜は、先週入手した戦前の希三のこけしの話である。戦前の希三のこけしは友の会の入札にも何回か出ていたが、良いとは思ったものの入手するところまではいかなかった。特に何年か前に出た尺5寸の希三は保存も良く素晴らしい出来であったが大きさに負けて断念してしまった。その希三は整った表情であり、今思うと昭和15年頃の作だったようだ。その希三のこけしに取りつかれてしまったのは、14年作を見てからである。その独特な表情に魅せられてしまったのである。希三こけしについては、第604夜、605夜で紹介しているが、その時点では曖昧であった大沼竹雄こけしとの類似性について、改めて補足したいと思う。口絵写真はその希三こけし(14年)の表情である。
大沼(後藤)希三は、「こけし辞典」に依れば、『木地は丹野勝次にならったが、こけしは大沼竹雄に影響をうけた。昭和15年ころのこけしは竹雄の型をそのまま継承し、岩太郎系の作風である。』とある。
写真(2)の中央が今回入手した希三(尺7分)、右は604夜の8寸。中央の希三には胴底に「14.8.20」の書き込みがあり、共に昭和14年のこけしと思われる。左のこけしは、「山形のこけし」の302頁に写真掲載されている大沼竹雄のこけし(尺7寸5分、昭和9年、高梨与右衛門氏蔵)である。こうして並べて較べてみると、希三と竹雄の類似性がよく分かる。後が膨らんだ前髪、前髪の後に描かれた放射状の水引、4筆の鬢、胴は全体に黄色を薄く塗り、そこに花芯の大きな特徴的な横菊を上部に描き、下部には正面菊を、また中央部には小さな横菊を2輪左右に描いている。胴最下部の土まで、全く同様の模様である。これから、「こけし辞典」の記述通り、希三が竹雄を真似ていたのが良く分かる。但し、14年作では、面描の眉と目が接近し、鼻・口とは離れており、泥臭く、野武士のような独特の表情をしている。そしてそれが、希三こけしの大きな魅力でもあると思う。しかし、この表情は15年になると急速に変化し、605夜で紹介したような端正な美人こけしへと変貌していくのである。
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コメント
失礼なことですがお尋ねいたします。本年の山寺こけし供養祭は終わったのでしょうか。こけし会のホームにはでていないものですから。
宜しくお願いします。
投稿: いなかもの | 2012年11月14日 (水) 12時23分
いなかもの様
ご連絡ありがとうございます。
山寺の「こけし塚供養祭」は11/23(金・祝)13時から、こけし塚前で行われます。よろしくお願い致します。
投稿: 国恵志堂 | 2012年11月14日 (水) 21時53分
早速のご連絡ありがとうございます。例年供養祭に参加しておりますが、いつもですと11月初めに執り行われているはずで、本年は何のお知らせを知ることができませんでした。今回も参列させていただき亡きこけし作者を供養させてまいりたいと思います。
投稿: いなかもの | 2012年11月15日 (木) 14時19分