第794夜:大沼誓のこけし(60万アクセス)
今日、本ブログのアクセス数が60万件を超えた。50万件を超えたのが5/14だったので、約7カ月で達成したことになる。見にきて下さった方々に御礼申し上げる。さて、鳴子好きの私にとっても、大沼誓のこけしはかなり上位に入るこけしである。にも拘わらず誓のこけしは殆ど持っていない。戦後の誓こけしはかなり作られており、市場でもそれほど珍しいこけしではない。しかし戦前のものとなるとやはり多くは残っておらず、入札市場に出ることも多くはない。以前、戦前の秀作が目の前に現れたこともあったが手元に留めることは出来ず、その後そういう機会も訪れなかった。今夜紹介するこけしは昭和19年のもの、戦前最後のものであるが、流石に戦前「誓」こけしの俤を色濃く残しており、満足できる1本となった。今夜は、その誓こけしを紹介しよう。口絵写真は、その表情。
鳴子系の大沼誓を纏めて取り上げた文献は少ないので、「こけし辞典」を参考にして簡単に紹介しておこう。大沼誓は明治23年、鳴子の生まれ、鳴子高等小学校を中退し、高橋勘治の弟子となって木地修業をした。こけしも古くから作ったが、本格的に作り出したのは昭和14年に復活し、翌15年に自宅にロクロを据えてからのこと。18年には木地専業となり、戦後もこけしを作った。昭和35年に71歳で没している。14年の復活作は他人木地であるが、15年からは自挽きとなり、肩の高い木地に染料が濃く滲み、古拙な風味を漂わせている。
写真(2)右が本項のこけしで大きさは5寸8分、「19.2」と五十五才の書き込みがある。昭和19年2月ということであろうか。左は6寸で六十七才との署名があり、戦後の標準的な誓こけしである。55歳作は蕪頭で胴は細く、肩の山は高く、戦前の誓こけしの特徴をしっかり備えたこけしである。戦前の誓こけしの頭はやや縦長なのであるが、本項のこけしは横広気味で顎が張っており、やや頭でっかちの感がある。前髪が大きく額に被さり眉との間隔が狭い。眉と上瞼は三角形状に角張り、その凹みを埋めるように瞳が描かれている。頭が横広のために眉・目がやや左右に開いているので、戦前の標準的な誓の表情とはやや異なる。右上方に向けた視線は鋭く、小寸なのに何とも生意気な顔つきである。この厳しい表情は当時の世相を反映したものなのであろうか。肩の山はかなり高く、赤いロクロ線が太線と細線のペアで2段に入り、胴上下の太いロクロ線と相まって重厚な雰囲気を醸し出している。19年の小寸ものとは言え、戦前の誓こけしをしっかり主張しているこけしである。左の67歳作では頭は縦長となり、肩の山も低くなった。眉・目の湾曲はなだらかで優しい表情になっているが、右上方を向いた視線は戦前から変わっていない。戦後も落ち着いてきた時代のこけしである。
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