第800夜:忠蔵70歳のこけし
「木の花(第拾五号)」の『ピーク期のこけし(二)』では、高橋忠蔵のこけしを取り上げている。そこではピーク期のこけしとして、昭和12~13年頃の戦前作を第1のピーク期とし、戦後の70歳から73歳頃までを第2のピーク期としている。そして、『特に70歳より73歳までの選ばれた忠蔵こけしには、戦前の第1ピーク期の忠蔵こけしと比べて、少しも遜色がない質の高い優作が多い。』と解説している。
写真(2)は、真ん中が今年になって入手した70歳の忠蔵こけし(6寸)。『ピーク期のこけし』に掲載されている②と同手のこけしである。前面の緑色が退色しているがロクロ模様のため鑑賞上の影響は少ない。このピーク期の忠蔵こけしの特徴は、キンの鯨目とは異なる独特のやぶにらみのような目の描法にあるのであろう。戦後のそれまでの忠蔵こけしとは一線を画するこのこけしは、戦前のピーク期のこけしを再現したものかも知れない。それは収集家の働きかけによろものだったのだろうか。写真(2)左も同じ70歳の作(5寸)。こちらの方が頭の形、目の描彩ともより戦前作に近いかも知れない。写真(2)右は71歳作(4寸2分)。こちらは通常の忠蔵こけしで戦前作の影響は少ない。「木の花」には70歳から74歳までの5本のこけしが載っているが、本ブログのこけしも含めて、戦前の情味を色濃く残しているのはやはり70歳作と言えるようだ。
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コメント
とても味わいのある表情のこけしですね!高橋忠蔵工人のこけし、好きなこけしのひとつなのですが、第一ピークのこけしを直に見たことはありません。いつか見たいと思っています。
投稿: yukaeru | 2013年1月16日 (水) 00時58分
yukaeru様
この時期の忠蔵こけしの表情は格別ですね。
戦前の昭和12年頃のこけしは割合残っているので、見る機会はあるかと思います。楽しみに待ちましょう!
投稿: 国恵志堂 | 2013年1月16日 (水) 21時22分