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第815夜:冬の山形旅行2(伊豆工房)

130306_izu_kobo山形旅行の2日目は、あつみ温泉からバスで鶴岡の山居倉庫(白壁土蔵造りの米蔵)を見学し、余目駅から陸羽西線で車窓の雪景色を楽しみながら古口駅へ。ここから雪見船にて最上川の船下り。船は周りに囲いがあり中には炬燵が用意された冬仕様船。船頭さんの軽妙なトークと山形民謡の舟歌を聞きながら、暖かい鍋料理の昼食をとる。1時間ほどの船旅を楽しんだ後、バスで銀山温泉に向かう。内陸に行くにしたがって雪の量が多くなり、道の両側には雪の壁が出来ていた。16時頃に銀山温泉着。宿は大正ロマン漂う温泉街から徒歩で5分程手前にあった。口絵写真は雪に埋まる伊豆工房。

銀山温泉に着いたのは16時頃。温泉街にガス灯が灯るまで未だ時間があるので、伊豆工房に行くことにする。宿の案内図を見ると、工房は宿から温泉街とは逆方向に暫く行ったところ。雪道を気楽な気持ちで出かけたが、なかなか着かない。10分ほど歩いてようやく「伊豆工房」の看板が見えてきたが、何と店はシャッターが閉まっている。大きな工房の周りを一周したが裏の入口には大きなワンちゃんが2頭、しっかり門番をしている。写真(2)。

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工房の中から何となく音が聞こえるので、電話をかけてみる。暫くコールした後、伊豆徹さんが出られた。こけしを見に来たことを話すと、入口を開けて中に入れてくれた。水曜日は休みなのだそうだ。店(みやげ店)の中を一通り見せて貰い色々と話を聞いていると、座敷の方へ上げてくれた。こちらには、徹さんの色々なこけしや木地製品が置かれていた。

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写真(3)は工房の座敷で、こけしを前に話をしてくれる徹さん。徹さんのこけしには普通の銀山こけしやおしんこけしの他に、特に「定雄型」と書かれたこけしも並んでいた。

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写真(4)の右3本がその定雄型のこけし。なお、左端は「こけし往来(第17集)」の表紙に掲載された「羽咋芳太郎」のこけしで、徹さんの定雄型(中央の2本)の「原」となったもの。徹さんは羽咋とあるが定雄ではないかと言っておられた。中央の2本は同じ定雄型であるが頭の形や面描・胴模様など細部がやや異なる。作った時期が違うのであろう。なお、右から2本目は桜材で、未だ作りかけのものを無理を言って完成させて頂いた(ロー引き無し)。桜材は古風な感じが好ましい。右端は「原」が別の定雄型。肩の山が高いのが特徴。いずれも凛々しい表情に惹かれた。徹さんは定雄のこけし6本を写した大判の写真を持っており、今回の定雄型もそれを元に作ったようだ。写真(5)に定雄型の署名を示す。

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伊豆工房を訪ねたのは今回が初めてで、徹さんとも初対面であったが、大変感銘を受けた。はっきり言って、今まで銀山こけしにはあまり関心が無かったのも事実。しかし、今回、徹さんにお会いし、色々とお話をして、銀山こけしを見る目が大きく変わった。定雄さんは33歳で亡くなっているため、残るこけしもあまり多くないと思われるが、もっと追究したいこけしだと思う。そして、徹さんにも古い定雄型をもっと作って頂きたいと思う。

なお、私が訪ねたのは、工房兼みやげもの店で、本店(自宅)は銀山温泉街の奥まったところにあり、徹さんも夜間は自宅に帰るのだと言う。本店ではお父さんの護さんが健在で徹さんの木地に描彩をしており、その護さんのこけしが中心に置いてある。徹さんのこけしはこちらの工房の方にある。子供の誕生記念に作る「誕生こけし」は護さんが作り出したもの、今は他の工人さんも作るようだが、身長と体重まで同じ大きさ、重さに作るのは伊豆工房のみだろう。30年間で2万本も作ったと言う。おしんこけし共々、伊豆工房の名物である。

最後に、銀山温泉の写真を2枚。

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写真(6)が有名な雪化粧した温泉街の全景。

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写真(7)は大正ロマン漂うガス灯である。

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コメント

以前銀山温泉に旅行した時に、奥の本店を訪ね、徹さんのお母様にお手製の甘酒をご馳走していただきました。
こけし手帖の庸吉の記事、とっても面白く、私も庸吉型が好きなのでちょっと興奮しました☆
新発見ですね♪

投稿: 玉ちゃん | 2013年3月10日 (日) 23時09分

玉ちゃん 様
伊豆さんはお父さんの護さんもお母さんも80歳を越えているそうですが、お元気のようですね。嬉しいことです。
庸吉に限らず、戦前のこけしには工人の工夫が色々とあるのですね。そんなところも古品鑑賞の楽しみです。

投稿: | 2013年3月11日 (月) 19時20分

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