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第821夜:大沼誓と力のこけし

Sei_55sai_8sun_kao今日で3月も終わりである。早々と桜も咲いたのに今日はまた冬に逆戻りのような天気である。さて、第794夜で大沼誓の6寸こけしを紹介したが、同じ出品者から8寸の誓こけしが出てきた。胴底には「五十五才」の署名と「19.2」の書き込みがあり、794夜の6寸と同時に求められたものと思われる。6寸の方は誓の定寸物とはやや異なる特徴があったが、この8寸は正に誓の標準的なこけしである。今夜はその誓こけしと、誓を継いだ力の誓型のこけしを比べて紹介したいと思う。口絵写真は、19年の誓8寸の表情である。

Sei_55sai_8sun_hikaku

写真(2)は左2本が力のこけし、右2本が誓のこけしである。先ず誓のこけし(右から2本目)を見ていこう。大きさは8寸3分。頭は下膨れの蕪型、肩の山は高く、胴は直胴であるが裾にかけて広がっている。前髪は大きく、眉・目が中央に寄ったおぼこい表情は、多彩な工人が活躍した戦前の鳴子系中でも異色なこけしである。

息子の力さんはその誓型を継いでいるが、そのこけしは2種類あるようだ。1つは写真(2)左端のもので、西田コレクションの誓こけしを「原」にしたもの。昭和41年から作られている。もう1つは左から2本目のもので、表情など右から2本目の誓と良く似ているのが分かると思う。その「原」が何なのか力さんに聞いたことはないが、右の誓に近いものであったと思われる。2種類とも胴模様は、正面菊を3つ組み合わせたものであるが、左から2本目の型は下部の菊の一方が紫で描かれるので「原」もそのようになっていたものと思われる。なお、この2種類は頭の水引と鬢飾りが異なるので、それを写真(3)に示す。

Sei_55sai_8sun_bin_hikaku

その左2本の胴模様に対して、右から2本目の胴模様は菊花の配置が上下逆になっているのが分かると思う。下部が広がった胴の形から、上に1輪、下に2輪を配した方が上手く収まっているのに、上を2輪、下を1輪にしたために、何とも窮屈な配置になってしまっている。どうしてこうなってしまったのかは分からない。ただ、この様式は戦後にも引き継がれ、流石にバランスが悪かったのか、右端のこけしのように、上2輪は小さくなり下1輪は大きくなっていった。岡崎斎によって確立された菱菊模様が鳴子系の代表的な模様となり、それが胴下部に大きな正面菊を描くことが影響したのかも知れない。

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