第832夜:温顔静姿
写真(2)がその武蔵こけし。大きさは尺。胴底には入手者が書いたと思われる「高橋武蔵 昭和十四年六月十五日」の書込みがある。頭はやや横に広い丸頭で、胴は太いが直線的でどっしりとした重量感がある。肩の山は大きく高い。胴には3段の重ね菊が大きく描かれている。頭が横広ぎみなので顔の面積も広く、眉・目は鬢寄りに大きくゆったりと描かれている。やや視線を下げ、かすかな微笑みを湛えた表情は、まさに「温顔静姿」を体現したものと言える。
写真(3)に昭和10年代の武蔵こけしを並べて見た。右から昭和10,11年頃、同13年頃、同14年、同16,17年頃。右端は胴細めで肩の山は低い。3段重ね菊の最下段の菊には茎が無く、緑の土から蔓が左右に2本ずつ出ている古い描法である。右から2番目では肩の山が高くなり、最下段の菊には緑の土が描かれているが蔓は描かれていない。左から2番目の本稿のこけしでは最下段の土も描かれなくなっている。左端のこけしは、頭がやや縦長となり、眉・目の描線に勢いが無く寂しげな表情である。また、最下段の土も最上段の蔓も描かれなくなった。
写真(4)は胴裏であるが、中央の2本には胴裏下部に「高橋武蔵」という名前が書いてある。戦前の武蔵こけしには署名は無いのが普通であるから、これも本人署名では無いと思われるが、2本のこけしの同じような場所に名前が書かれているのは興味深い。
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コメント
本人の字に似ているような気がします。
投稿: しょ~じ | 2013年5月30日 (木) 19時42分
しょ~じ様
お久しぶりです。
そうですか。では本人署名ですかね。
客に頼まれて書いたのかも知れませんね。
投稿: 国恵志堂 | 2013年5月31日 (金) 19時10分