第834夜:佐藤護(S15)
写真(2)に本稿の護こけしの正面と側面を示す。大きさは6寸。全体に古色は付いているが色は完全に残っているので、ちょうど良い色合いである。角ばった頭に太目の胴。肩はやや張っている。佐藤護は佐藤寅治の3男で、父について木地修業をし、父と共に黒川郡嘉太神に行った折にこけしも作り始めたと言う。その後は北岡木工所で横木類を専門に挽いた。出征を経て昭和16年より佐藤好秋の工場で本格的に木地を再開とある。但し、昭和15年作というこけしが「古計志加々美」等で知られており、「加々美」では佐藤友晴木地に描彩のみ行ったとある。従って、15年作の護こけしは木地別人なのかも知れない。
描彩を見てみよう。胴には大きめの菊を4段に重ねて描いており、ロクロ線はない。面描では、切れ長の細い三日月目が目を引く。眼点は小さく鋭い眼光を放っている。破調の美とも言われるような表情であるが、本稿の護はかなり整った表情に見える。頭頂部の水引は前髪後ろの青点より放射状に伸びる。くねり線はない。鬢飾りは前髪の横から始まり、後方に向かって横に引かれており、鬢の上部までしか描かれていない。前髪は振り分け髪、鼻は上部が離れた割れ鼻で直治や直助にも見られる。口は赤二筆である。父寅治からの伝承と思われるが、寅治のこけしが残されていないため推測の域を出ない。ただ、叔父である直治や直助と通じる部分も見受けられ、周治郎系列の作風を漂わせている。
写真(3)で、その後の護こけしと比べてみよう。右は昭和16年の作。本格的にこけしを再開してからの作と思われ、木地も本人であろう。頭は縦長の卵形となり、肩はなで肩となっている。面描は大きく変わる。眉・目は湾曲が大きくなりユーモラスな表情となる。15年作(中央)のような力強さ、ドキッとするような鋭さは影を潜める。これは眼点が大きくなったことによるものであろう。左は戦後の56歳作。木地形態は15年作に近いが胴は細く、肩もややなで肩である。表情もなかなか味わいがある。胴の重ね菊も4段であり、中央の15年作を意識して作ったようなこけしである。こちらも、面描、胴模様とも力強さは15年作に及ばない。
写真(4)は(3)の3本の側頭部を比べたもの。鬢が太く、鬢飾りも水平で後ろに跳ねるように描かれている15年作に対して、右の16年作では鬢が細くなり、鬢飾りは数が多く華やかになる。左の56歳作では鬢は更に小さくなり、鬢飾りも小さく斜めに描かれるようになる。こけしは、その作られた時代を反映するものであり、この3本も無言の内にそれを語っているのであろう。
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