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第860夜:大内慎二の初期作

Shinji_s58_kao今夜も、ヤフオクで野口英世1枚で入手したこけしである。出品タイトルは「大内慎二の初期作」と出ていた。慎二と言うと今朝吉型が直ぐ頭に浮かぶが、出品されていたこけしは今朝吉型とは似ても似つかない表情のもの。そのせいか、結局他に入札者は現れず出品価格のまま入手出来た。胴底に「58.11」の書込みがあるが、慎二がこけしを作り始めたのは58年の9月頃からと言うから、確かに初期のこけしと言うことが出来る。口絵写真は、その慎二初期作の表情である。

慎二がこけしを作り始めるにあたり、その手本としたのは父であり師匠である一次の当時のこけしであったものと思われる。写真(2)は、左が一次のこけし(7寸9分)、真ん中が本項の慎二のこけし(8寸1分)である。縦長で角ばった頭、直線的な胴の形態など継承しているのが分かる。

Shinji_s58_hikaku
しかし、表情はあまりに違っている。左の一次のこけしの製作年代がはっきりしないので、あるいは58年頃には真ん中の慎二のような表情のこけしがあったのかも知れないが…。慎二のこけしは、眉・目の描線が弱く何とも頼りなくとぼけた表情に見える。前髪も含めて、初期作に見られる稚拙さとも考えられるが、この辺がヤフオクでの人気の無さに繋がったのであろう。しかし近くで良く見ると、二重の細い瞼の中の眼点は、右目は斜めに左目は丸く強めに打っており、特に左の眼点は下瞼からはみ出して異様に光っているのが分かる。眼点のはみ出しは今朝吉の特徴の1つでもあり、偶然かも知れないが、慎二のこの初期作の中に片鱗をうかがい知ることが出来る。写真(2)右は59年12月の今朝吉型(7寸5分)。慎二は59年になると精力的に今朝吉型の復元に取り組み、このような素晴らしい今朝吉型を作って、こけし界に衝撃を与えるのである。しかし、今朝吉型があまりにも素晴らしい出来だったため、もはや真ん中のようなこけしは作れなくなってしまったであろう。そういう意味では、本項のこけしは却って貴重なのかも知れない。

Shinji_s58_syomei_2
写真(3)は署名である。真ん中の初期作では、左の一次署名にならって字も小さく大人しいものであるが、右の今朝吉型では自信も出てきたのであろう。力の籠った大きな署名に変化している。

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コメント

晩年の一次作にそっくりですね!

投稿: | 2013年10月 4日 (金) 11時53分

そうですか。
私は一次の晩年の作を良く知らないのですが、やはり似ていますか。
慎二が直ぐに今朝吉型を復元しないで、暫くこの一次型を続けていたらどうなったのでしょうね…。

投稿: 国恵志堂 | 2013年10月 4日 (金) 22時14分

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