第864夜:平賀貞夫のこけし
写真(2)がそのこけし(8寸7分)であり、ヤフオクで入手したのであるが、出品時のタイトルは「作並不明」であり、出品時の解説にも工人に関するものはなかった。胴底には「仙台 陸奥売店」の印があり、鉛筆で「平賀健次郎」の書込みがある。頭大きく、顔は頭部の下半分にこじんまりと描かれている。前髪は下部が横広がりではなく纏まっており、横鬢は太く大きい。目は下瞼が下に凸で小さく、鋭い表情である。一般的な平賀家のこけしと比べると、かなり特徴のあるこけしである。一方、胴は裾が窄まった典型的な平賀家のこけしであり、蟹菊を二輪重ねている。文献を色々と調べた結果、平賀貞夫のこけしだろうと思う。
さて、作並系の平賀貞夫は大正14年、仙台市の生まれ、平賀貞蔵の長男である。昭和8年に父と共に作並温泉に戻る。昭和14年、高等小学校卒業後、国鉄に入社して作並駅の改札係をするかたわら、平賀謙蔵、貞蔵に就いて木地修行をした。昭和18年には木地を止め、24年7月に病没しているため、その制作時期は5年程度と短い。平賀家では謙蔵、謙次郎が中心になってこけしを作っていたが、昭和14年に謙次郎が出征したため、貞蔵や多蔵(謙蔵長男)、貞夫がこけしを作るようになった。そのため、それらのこけしは良く似ており、貞夫のこけしは謙次郎や多蔵名義で流布しているものも多いという。
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