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第874夜:橘コレクションのこけし(鈴木安太郎)

Yasutaro_ttbn_s13_kao今夜も、ヤフオクに出品された橘コレクションのこけしの紹介である。橘氏の著書「こけしと作者」190頁の第79図、左端に掲載されている鈴木安太郎の現品である。「こけしと作者」の写真では出来立ての極美こけしとして紹介されているが、それから75年も経った今では埃にまみれて色も落ち、相当に黒ずんだこけしになっているのは致し方ないのだろう。口絵写真はその安太郎のこけしである。

寒河江の鈴木安太郎のこけしは好きなこけしであるので、これまでも何回か話題にしている。安太郎は大正6年頃より木地業を任され、木地玩具も作っていたらしいがこけし製作については判然としない。昭和12年、川口貫一郎氏の勧めで、父米太郎のこけしを思い出して作るようになったという。以来戦前は18年頃までこけしを作っていた。14年頃からはかなり作っており第576夜に紹介したような作風のこけしが良く知られている。

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さて、本項のこけしは、写真(2)のように胴底に橘氏のラベルが貼られており、昭和13年6月に橘氏が川口氏より入手されたことが分かる。昭和13年のこけしは殆どが川口氏が入手されたものと思われ、「らっこコレクション図譜」76頁にも2本(No326、327)が掲載されている。保存極美で素晴らしい。本項のこけし(8寸3分)も保存状態を除いて、それと同等である。

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安太郎の戦前のこけしと言うと、頭が角ばって縦に長く、眉目も直線的で古武士を髣髴させる鋭角的なこけしが思い浮かぶ。写真(3)左がそれである(第576夜)。右が本項のこけしであるが、かなり違った感じを受ける。製作年代は右が13年、左が14年頃で時期的にはその差は一年あるかどうかである。木地形態では、13年作は頭の縦横の長さが同じくらいでやや丸みを帯びている。首は細めで肩もやや丸い。14年作に比べると全体的に柔らかい印象を受ける。

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次に写真(3)の頭部を拡大して表情を比べて見た。一見、かなり異なる表情に見えるが、目の描法は殆ど同じである。右の13年作では眉毛の湾曲がやや大きく、目と眉も接近している。鼻は小さく、目の高さの位置から描かれている。「こけし辞典」では『戦前作でも古いものほど鼻の上端目より上に達する』とあるが、これは左のこけしには当てはまるが、右のような13年作ではむしろ逆である。全体的に頭が縦長になった分、眉と目が離れ、鼻も鬢も長くなって見た目の印象が変わって見えるのであろう。どちらにしても端正で格調の高いこけしであることは間違いない。

ここのところヤフオクに出品されている一連の橘コレクションのこけしは、かなり汚れて黒ずんでおり保存状態は良いとは言えない。消しゴムで汚れを取ることで多少綺麗にはなるが、色彩までは復活できないのが残念である。

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写真(5)は消しゴムで汚れを取っている最中のもの。送られてきた時は向かって左のように黒ずんだ状態。これを消しゴムで丁寧に汚れを取っていくと右のような状態になる。特に頭頂部は汚れが激しく殆ど真っ黒なので、汚れを取る効果は大きいと思う。但し、胴のロクロ線は赤と黒を除いて、綺麗になる分、色が薄くなるのでそのままの方が良いのかも知れない。

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コメント

消しゴムで汚れを取ったり。蝋引きをウエスでとったことはあります。古い鳴子のこけしで首のゆるいものを何本か、所有しております。観賞には、問題ないのですが、何か固定させる、いいやり方は、ございませんか?オークションでゆるいのがわからず落札してしまいがっかりしております。その点、木地山、津軽はいいですね。

投稿: たー坊 | 2013年11月 9日 (土) 22時18分

たー坊様
鳴子こけしなど嵌め込みの首がぐらぐらしたり抜けてしまったりすることは、古いこけしではよくありますね。抜けてしまった場合にはティッシュなど薄い紙を挟んで固定することはあります。私の場合、ぐらぐらするのはそれはそれで南部系のこけしのように玩具っぽくて良いと思い特に対応はしていません。ヒビとか割れもそうですが、戦前物など古いものでは仕方ないですね。鑑賞に大きな支障がなければ許容範囲としています。

投稿: 国恵志堂 | 2013年11月11日 (月) 14時56分

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