第888夜:鈴木征一の初期作
写真(2)が本項の征一のこけしで、大きさは7寸3分。通常良く目にする征一のこけしとは異なった雰囲気で、面描、胴模様とも手慣れた感じはしない。胴底には「52.7」の鉛筆書きがある。
鈴木征一は昭和19年の生まれ、昭和47年から奥山庫治について5年間の木地修業を行い、52年5月からこけしを発表したと「伝統こけしハンドブック」に記載されている。「52.7」は入手年月と考えられるので、このこけしは征一の極初期のこけしと思われる。通常、新人工人のこけしは師匠のこけしを真似たものになるのであるが、未だ手慣れていないこともあってか独特の雰囲気を持ったこけしとなることが多く、その辺りが初期こけしの魅力とも言えるだろう。本作でも、両目が真ん中に寄って肘折らしいややグロテスクな味わいが感じられる。胴模様の重ね菊もぎこちないが、それが稚拙の美を醸し出しているとも言える。
写真(3)左は昭和30年前後の喜代治のこけし。表情、胴模様とも師匠の庫治よりも喜代治の俤を髣髴させるこけしになっている。ただ、この雰囲気のこけしは長くは続かなかったようだ。
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コメント
第2次こけしブームの頃は所謂古品と呼ばれる昭和戦前期迄のこけしが数十万からというべらぼうな値で取引されていたと聞きましたが、現状ではネットだと安ければ千円単位での入手も可能な状態ですね。やはり、昔のブームの時は経済的に余裕のある中高年の方々が中心でしたので、そのような現象も起こったのでしょうが今のブームは若い女性が主流なので、金銭的にも志向的にも今のこけしだけを好み古品類には殆ど目を向けない傾向があるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。因みに小生は前のブームが華やかし頃の昭和50年代からこけしが好きでしたが、何分子供でしたので、古いこけしが高値で売買されている事実など知る由も無く、只、旅の土産に新品を購入していて悦に入っている状態でした。大人になってから古品にも興味が湧き、欲しいなぁと思う時期には幸いにして貧乏サラリーマンである小生にも手が届く値で買える様になっていたので、幾つか購入できましたが(今は新品よりも古品の方に興味の中心が移ってしまいました)。古品を手に入れるのには、今の状態の方が良いのでしょうけど現役の工人さんの生活を考えると、やはり昔のブームみたいな状態の方が良いのかも知れませんね。
投稿: 益子 高 | 2013年12月11日 (水) 20時04分
益子高様
お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。
最近こけしに興味を持ち始めた若い方々は未だ古品にはそれ程興味はないようです。そう言う私も40年にもなるこけし収集歴の中で古品を求めるようになったのは高々10年くらいです。インターネット等で古品を見る機会が増えたことと価格が手頃(勿論高価なものも多いですが)になったことが要因ですね。古品の良さ(その作られた時代を体現している)は古品でしか味わうことは出来ません。少しでも良いから、多くの方々が古品を持たれたら良いと思います。
投稿: 国恵志堂 | 2013年12月23日 (月) 08時40分