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第885夜:橘コレクションのこけし(伊豆定雄)

Sadao_izu_ttbn_kao早いもので、今年も師走を迎えた。夏が長く、秋が短かったような気がする1年であった。こけし関連の行事も、東京近辺では今日まで開催されている鳴子こけしまつり(人形の家)と山河之響の会の四人展を残すのみとなった。ヤフオクでは、橘コレクションの古品出品が続いており150点ほどにもなったが最近は「こけしと作者」に載っているような著名なこけしは少なくなったようだ。今夜は最初のころに入手した伊豆定雄のこけしである。口絵写真はその表情。

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写真(2)が伊豆定雄のこけし。大きさは6寸5分。「こけしと作者」の180頁、第73図の左から2番目の現品である。古色が付いて黒く汚れており、前面の緑ロクロ線はほぼ消えてしまっている。中括れの大きな胴、低い肩の山、やや縦長の頭にオカッパの髪、大きな瞳が愛らしい。定雄は大正時代からこけしを作っていたようだが、文献では昭和5年発行の日本郷土玩具(東の部)掲載のものが一番古いようだ。そのこけしは頭は本項のこけしより丸いが木地形態はほぼ同様で、解説では「絵蝋燭の感じ」と評されている。胴模様は大輪の正面菊を2輪描いている。本項のこけしと同様のこけしは、「こけし辞典」と「愛玩鼓楽」に掲載されており、いずれも4段の重ね菊模様で昭和8年作となっている。「愛玩鼓楽」では『オカッパの中剃りは緑。肩の段の上は緑のロクロ線で塗られている。面取りは大きく底は鋸挽き。作り付け。胴模様の葉は描かれない。』

本項のこけしは「愛玩鼓楽」の解説と一致しているが、中剃りと肩上面が緑かどうかは判然としない。頭が縦長でオカッパの髪がかなり多いために顔の面積が狭くなり、左右の目が真ん中寄りで、細面の美人こけしとなっている。後年、定雄のこけしは頭が横広気味になって左右の目も離れて、ややコケティシュな味わいを持ってくるのであるが、本項のこけしは正統派の美人である。

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写真(3)は左が頭頂部の中剃り、右が胴底に貼られた橘氏のラベル(の痕跡)である。 

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