第896夜:久治戦前作
写真(2)が本項のこけし。大きさは8寸5分。胴底に「五拾五才」と「17.8」の書込みがある。「木の花(第弐拾五号)」では、久治の製作歴を「前期」「中期」「ピーク期」「後期」の4期に分けており、「中期」が昭和10年頃から27年頃までで、本項のこけしはその中に含まれる。この時期は昭和15年を中心とする戦前の第一次こけしブーム期にも当たり、多くの工人が多彩なこけしを作っていた時期でもある。新山家のこけしは、久治も含めて木地形態、描彩ともあまり変化のないものである。「前期」は大頭で大胆な木地形態、「ピーク期」は集中度の高い面描が印象的であるが、この中期のこけしは木地形態もおとなしく、面描にも際立った特徴がないと言える。
写真(3)は右が本項のこけしで左がピーク期の特徴を残す31年のこけし。このように並べて見ると、木地形態、面描とも両者の違いが良く分かる。横広の大きな頭、緊張感のある鋭い瞳など左のこけしの完成度は高く魅力も多い。一方の右のこけしは影が薄い。しかし、これが新山家のこけしの持ち味と言えなくもないであろう。黄胴にロクロ線と襟、裾だけの簡素な胴模様に何の気負いもない素直な瞳は良く似合う。見ていて心休まるこけしである。
| 固定リンク
「弥治郎系」カテゴリの記事
- <番外>友の会例会(H27年5月)(2015.05.25)
- <番外>こけし談話会(2015.05.11)
- 第1000夜:ステッキこけし(小関幸雄)(2015.04.19)
- 第998夜:佐藤慶治のこけし(H27花見)(2015.04.01)
- 第997夜:鶴松のこけし(2015.03.28)
「古品」カテゴリの記事
- <番外>こけし談話会(2015.05.11)
- 第1000夜:ステッキこけし(小関幸雄)(2015.04.19)
- 第999夜:極美古品(伊豆定雄)(2015.04.13)
- 第998夜:佐藤慶治のこけし(H27花見)(2015.04.01)
- 第997夜:鶴松のこけし(2015.03.28)
コメント