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第896夜:久治戦前作

Kyuji_s17_kao今年もあと1日余りで終わろうとしている。このブログが今年最後のブログとなる。今年は第798夜から始まったから、この1年では98夜しか進まなかったことになる。さて、今夜は戦前の新山久治こけしである。久治は戦前から戦後と長い期間作っているので、その残るこけしは多く、中古市場でも良く見るこけしである。しかし、「こけし辞典」や「木の花」でも、初期の大頭で耳を描いた時期のものや、戦後の昭和29年を中心としたピーク期のものを除くと記載は少なく、戦前のものでも評価は低い。今夜はそんな恵まれない時期の久治こけしを取り上げてみたいと思う。口絵写真はその表情である。

Kyuji_s17_3men

写真(2)が本項のこけし。大きさは8寸5分。胴底に「五拾五才」と「17.8」の書込みがある。「木の花(第弐拾五号)」では、久治の製作歴を「前期」「中期」「ピーク期」「後期」の4期に分けており、「中期」が昭和10年頃から27年頃までで、本項のこけしはその中に含まれる。この時期は昭和15年を中心とする戦前の第一次こけしブーム期にも当たり、多くの工人が多彩なこけしを作っていた時期でもある。新山家のこけしは、久治も含めて木地形態、描彩ともあまり変化のないものである。「前期」は大頭で大胆な木地形態、「ピーク期」は集中度の高い面描が印象的であるが、この中期のこけしは木地形態もおとなしく、面描にも際立った特徴がないと言える。

Kyuji_s17_hikaku
写真(3)は右が本項のこけしで左がピーク期の特徴を残す31年のこけし。このように並べて見ると、木地形態、面描とも両者の違いが良く分かる。横広の大きな頭、緊張感のある鋭い瞳など左のこけしの完成度は高く魅力も多い。一方の右のこけしは影が薄い。しかし、これが新山家のこけしの持ち味と言えなくもないであろう。黄胴にロクロ線と襟、裾だけの簡素な胴模様に何の気負いもない素直な瞳は良く似合う。見ていて心休まるこけしである。

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