第902夜:金三の梅吉型(1)
昨夜は藤井梅吉のこけしを紹介したので、今夜はその梅吉のこけしを継いだ高橋金三の梅吉型の話をしよう。昭和11年梅吉の死後、梅吉型は途絶えてしまったが、昭和35年より花巻に居た佐藤誠により復元された(第290、291夜を参照)。その誠も昭和45年に亡くなり再び梅吉型は廃絶してしまった。それを惜しんだ花巻の高橋金三が煤孫実太郎の薦めもあって梅吉型を復元したのは昭和47年のことである(第55夜参照)。その後の金三梅吉型については文献等で纏めた報告はないが、こけし手帖508号に村上穆氏が「追悼 高橋金三さんの梅吉こけし」と題して寄稿している。この手帖記事に沿って、手持ちの金三こけしを眺めてみたい。口絵写真は昭和49年頃の梅吉型の表情である。
写真(2)に金三梅吉型の復元作を並べてみた。大きさは8寸。右より昭和47年2月の初作近辺(第55夜で紹介)、2番目は47年8月、真ん中は47年後半から48年前半頃、4番目は48年後半、左は50年6月。梅吉の頭部の描彩様式は4種類程に分けられるが、この5本は蛇の目に前髪があり、赤い手絡模様が付いたものである。金三が最初に参考にした梅吉こけしは定かではないが、復元初作を紹介した手帖133号の記事には昭和5,6年頃の梅吉こけし(中屋旧蔵、9寸)が掲載されており、1つの参考になろう。但し、この中屋梅吉は頭頂部は蛇の目ではなく、手絡模様のみである。金三が現品ではなく写真で復元したとすれば、頭頂部ははっきり分からなかったと思われる。この中屋梅吉は「木の花(第八号)」にカラー写真で掲載されており、胴模様の描彩色が分かる。それによると、重ね菊の花芯と最下部の四つ花が緑で描かれているのである。写真(2)の右2本(47年作)は花芯と四つ花が同じ緑になっている。真ん中のこけしでは、四つ花は緑であるが花芯は黄色に変わっている。
さて、手帖508号の村上氏の記事では4本の梅吉型こけしが掲載されており(写真(3))、右の2本(8寸と6寸)は写真(2)のタイプである。8寸(48年7月)と6寸(48年9月)で、6寸は郡山こけし蒐楽会の例会頒布品とのこと。写真(2)の左から2本目は8寸であるが、最下部の四つ花がなく、蒐楽会頒布品と同型のものである。形も安定し張りのある表情は素晴らしく、右3本の復元作から一皮むけたような秀作になっている。
村上氏の記事の左2本(8寸と6寸)は8寸が都築蔵品、6寸が渡辺国三蔵品の復元作で、共に昭和49年1月の蒐楽会新年例会で頒布されたもの。頭頂部が蛇の目で前髪、手絡模様が無いタイプである。眉・目のアクセントが特徴的なものである。
写真(4)にこのタイプの金三こけしを並べてみた。右から8寸(49年3月)、6寸(同)、5寸(49年6月)、7寸(50年6月)。右の8寸と6寸は村上氏の写真と同型のもの、日にちが経つにつれて、少しずつではあるが変化しているのが感じられる。写真(2)の左端のこけしも頭の形、面描はこのタイプであることが分かる。この48年から49年頃が金三の梅吉型の1つのピークと言えるだろう。良い「原」を元にした復元が工人にとって如何に大事かという証でもある。
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