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第899夜:橘コレクションのこけし(遠刈田不明)

Togatta_fumei_ttbn_kao今夜は今年初めて入手したこけしを紹介しよう。ヤフオクに出ていた橘コレクションのこけしである。橘著「こけしざんまい」の228頁「初期蒐集こけしのいろいろ」に写真掲載されているこげすの現品である。作者名は不詳であるが、掲載写真群像中一番の小寸でありながら、勘治や直治、久四郎ら錚々たるメンバーの中に入っており、橘氏が注目したこけしの1本であったのだろう。掲載写真では頬紅を差しているようにも見え、手元でじっくり見てみたいと思いオークションに参加して運良く入手できたものである。口絵写真はその表情である。

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写真(2)(3)は胴底の橘氏(木形子洞)のラベルとそのこけしである。大きさは4寸3分の作り付である。やはり全体的に汚れていたので、消しゴムで汚れをとった。ラベルの記載から橘氏が1932年(昭和7年)9月に入手したものであることがわかる。「作者不詳」とあることから工人から直接入手したものではなく、その製作年月は更に遡れるのかも知れない。木地形態から遠刈田系のこげすであることは分かったが、描彩は現在ある一般的なこげすと比べると異なる点が多々見受けられる。

首は鉋で溝を掘っており、そこに赤いロクロ線を入れている、更にその下に紫(?)のロクロ線が引かれているようだ。胴下部には2本の太いロクロ線が引かれており色は緑であるようだ。首からは黒で輪郭を引いた赤い襟が描かれ、胴模様はやはり黒で輪郭線を付けた梅花と蕾が一面に散らされている。葉や茎があったかどうかは確認できない。

そして、最も異なるのは頭部と面描である。頭頂部には緑を丸く塗り、その周りを4つの赤い半円で囲んでいる。頭頂部から鬢にかけての手絡模様は描かれていない。眉目は顔の上方で鼻は浅い丸鼻、口は墨の2筆描き、そして薄っすらと頬紅を塗っているのが分かる。一側目の眼点は大きいが張りのある格調の高い表情である。かなり描きなれた工人の作と思われる。

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写真(4)は右が本項のこげすで、左は佐藤正吉のこげす(戦前中の沢時代)である。本作、最初は庄吉の古作かと思っていたが、こう並べてみると筆致が異なるようだ。正吉の頭頂部は所謂蝶型といわれるもの、本項のこけしの頭頂部はそれとも違う。この手絡のない頭頂部、墨のみの口、それに頬紅などの様式は、遠刈田の古い様式なのかも知れないが、類例を知らないため何とも言えない。作者は誰なのであろうか。墨輪郭の梅模様は好秋のこけしに見られるが…。いずれにせよ、昭和1桁以前の遠刈田のこげすであることは間違いない。

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