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第911夜:昭二or万之丞?

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先週、ヤフオクに「・・・戦前・桜井昭二?」というタイトルで1本のこけしが出品されていた。「戦前」となっており、しかも保存もなかなか良い状態であったが、筆者以外の入札は一人のみで、4000円の最低価に対して5000円になることなく落札出来た。最近、戦前作は結構高価になる傾向があり、この価格での落札はラッキーと言えるだろう。さて、送られてきたこけしの胴底を見ると、鉛筆で「18・10・8 桜井万之丞」と鉛筆で書かれているのが読み取れた。出品者が何故「昭二?」としたかは定かではないが、「戦前の万之丞」で出品されれば、落札価も変わっていたかもしれない。このこけしが、昭二なのか万之丞なのか検証してみよう。口絵写真は昭二?の表情。

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写真(2)が問題のこけしの全体像。大きさは1尺2分。太目で反りの大きな胴に胴上部には太い鉋溝、胴下部には細い鉋溝を入れ、肩の山は大きく、その下三分の二にはウテラカシ(ザラ挽)を施している。胴には簡素な菱菊を描いている。頭は胴に比べるとやや小さめで、前髪は後部が膨らんだ形で、その横に放射状の赤い水引を描いている。前髪と鬢の間には赤2筆の小さな鬢飾りを入れている。鬢は4筆で小さめ、伏し目がちの瞳は大きめである。一般的な特徴は、戦前の万之丞の様式になっている。

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写真(3)は左が万之丞(7寸9分、昭和16年頃、「木偶相聞」掲載)、右が本項のこけし。ご覧のように非常に良く似ているのが分かると思う。木偶相聞の方はやや小さいためか胴の反りはそれほど大きくはないが、二本の鉋溝、赤と緑のロクロ線、肩の山のウテラカシ、そして胴の菱菊模様など、殆ど同一と言って良いだろう。面描は、本項のこけしが顔の面積が小さく、眉・目が真ん中寄りになっていて、やや寂しげな表情になっているが、眉の描法などは良く似ている。明らかな違いは、前髪の後ろの膨らみくらいである。

さて、本項のこけしが昭二作である可能性を考えてみよう。資料によれば、昭二は昭和14年(13歳)からこけしを作っているそうであり、「桜井昭二と第八回伝統こけし三十人展」には16年作が、「こけし辞典」には17年作が写真掲載されており、その時点で既に一人前のこけしを作っていたことが分かる。また、昭二のごく初期の作は万之丞の当時のこけしと良く似た作風であったとあるから、本項のこけしが万之丞を真似た昭二のこけしと言えなくもないだろう。

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写真(4)で第907夜で紹介した昭二の昭和22年作(左)と比べてみよう。22年作は細身ではあるが、胴の鉋溝、ロクロ線、肩の山のウテラカシなどは同一である。胴模様も、個々のパーツを比べてみればそれほど違いは見られない。

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写真(5)で頭部の描彩を比べてみた。前髪の後ろが膨らんでいる点などは良く似ている。18年と22年という4年ほどの違いであるが、戦前と戦後ということであれば、目が大きくなり、水引が華やかになる程度の変化は十分考えられる。本項のこけしが昭二の戦前作という可能性も捨てきれないであろう。

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